トヨタ本社

自動車メーカーの2020年春季団体交渉は3月11日、一斉に経営側から回答が提示された。最大手のトヨタ自動車は賃金改善(ベースアップ=ベア)についてはゼロとなる総額月8600円の回答となった。同社のベアゼロは2013年以来7年ぶり。

トヨタ労組はベアや定期昇給、手当てなどを合計した金額で組合員平均月1万1000円を要求していた。回答はベアゼロに加え、昨年実績の1万0700円を2100円下回る厳しいものとなった。同社は昨年に続いてベアの要求額を非公表とする総額方式としていた。回答にはパートタイマーの時給引き上げなど非正規従業員の処遇改善も含まれる。

一方で、年間一時金については6.5か月分の要求に満額回答が示された。昨年実績の6.7か月を下回るものの、一時金の満額は10年連続となった。ベアゼロとした回答について豊田章男社長は同日「高い水準の賃金を、このまま上げ続けることは競争力を失うことになる。もうひとつ。自動車産業を支えている多くの仲間に『トヨタと一緒に闘いたい』と思ってもらえる会社にしなければならない」と労組に説明した。

ホンダは、通常のベア1000円と独自の制度である「チャレンジ加算」の原資として1000円を合わせた月2000円のベア要求だったが、回答は1500円となった。この加算制度は組合員のチャレンジ意欲を喚起する狙いで、年2回、通常の賃金に上乗せして支給されている。昨年はベア総額が1400円の回答だったので、100円上回る水準となった。

しかし、一時金については6.0か月の要求に対し、回答は5.95か月になるとともに、満額だった昨年の6.3か月を下回った。ホンダは今年の交渉について「厳しい事業環境のなかで力強く大転換期を乗り越えるためには、“チャレンジ精神”というホンダの風土をさらに強化していくための『人への投資』が必要と判断。賃金関連総額で昨年を上回る回答を行った」とのコメントを発表した。

日産自動車では組合員の「平均賃金改定原資」として昨年と同額の9000円(うちベア相当分は3000円)が要求されていたが、回答は7000円となった。ベア相当分は公表していない。一時金は5.4か月の要求に対し、満額回答だった。

ホンダ本社《photo (c) Getty Images》