2019年のWRCにおけるピレリ装着車(WRC2への登録参戦車)。《写真提供 Red Bull》

四輪の世界戦線シリーズのタイヤに関する動きがこの12月、続々と出てきている。世界ラリー選手権(WRC)は2021年からピレリ、世界ツーリングカー・カップ(WTCR)は2020年からグッドイヤーのワンメイク供給となることなどが発表された。

WRCのワンメイクタイヤサプライヤー就任が決まったのは、WRCの名門ブランドのひとつといえるピレリ。FIA(国際自動車連盟)の発表によれば、契約は21〜24年の4シーズンとなる。

WRCのなかのいわゆるトップカテゴリー、トヨタやヒュンダイが覇権をかけて戦うカテゴリーにおいては、やはり名門ブランドであるミシュランのほぼ独占といえる供給状態が近年は続いてきた(17年にはD MACKタイヤの初優勝というトピックもあったが)。また、19年時点においてもピレリはJWRC(ジュニアWRC)のワンメイクタイヤ供給などでWRCに参画しているが、マニュファクチャラーズタイトル争奪戦参加陣営への供給は見られず、来季20年に関しても現段階ではミシュラン“1強”の構図は変わらないものと考えられる。

つまり翌21年にWRCトップ戦線のタイヤ事情は一変する、ということになるのだろうが、このままいくと20年最終戦として復活するラリージャパンが(当面の)ミシュラン花道ラリーということにもなりそうだ。

一方、今季19年までヨコハマのワンメイクタイヤで争われていたWTCRは、来季20年からグッドイヤーのワンメイクに切りかわることが決まった。こちらの契約期間は22年までの3シーズン。

WTCRは世界ツーリングカー選手権(WTCC)を後継しつつ、TCR規定トップシリーズと合流するようなかたちで18年からスタートしたシリーズ(WTCRは世界選手権ではない)。WTCC時代を含めヨコハマの供給が長く続いていたが、20年から新たな時代に入ることとなる。

ちなみにWTCC〜WTCRでは日本開催戦がお馴染みだったが、現段階で来季20年のカレンダーに日本開催戦は含まれていない。

また、世界耐久選手権(WEC)のLMP2クラスは現在(2019/2020シーズン)、ミシュランとグッドイヤーのマルチメイク状態となっているが、来季(2020/2021シーズン)から同クラスはグッドイヤーのワンメイクになることがやはり最近決まっている。

グッドイヤーといえば日本がF1ブームに沸いていた1980〜90年代にはF1のタイヤサプライヤーとして強い存在感を放っていたブランド。WTCRとLMP2に関する動きからは、ここへ来てモータースポーツへの注力度を再び、しかも大きく高めている気配が感じられるところだ。

なお、ピレリのワンメイク供給が続いているF1では、車両規定が大きく変化する予定の21年シーズンからタイヤにも大きな変化が起きる。これは以前から決まっていたことで、ピレリが供給元であることは変わらないが、長年にわたって13インチだったホイール径が18インチへと変更される(同じくピレリがタイヤ供給するFIA-F2は20年から18インチに移行)。

2019年のWRCにおけるピレリ装着車(ジュニアWRCへの登録参戦車)。《写真提供 Red Bull》 2019年のWRCにおけるピレリ装着車(WRC2への登録参戦車)。《写真提供 TOYOTA》 2019年WTCR王者となった#5 ノルベルト・ミケリス(ヒュンダイ、写真は鈴鹿戦)。《写真提供 MOBILITYLAND》 WECのLMP2クラスは2020/2021シーズンからグッドイヤーのワンメイクになる(写真は2019/2020シーズンのグッドイヤー装着車)。《写真提供 TOYOTA》 FIA-F2は来季2020年から18インチに。《写真提供 Pirelli》