スバルの中村知美社長《撮影 山田清志》

SUBARU(スバル)の中村知美社長は11月6日に行った2020年3月期第2四半期の決算説明会で、トヨタ自動車とのアライアンスについて「CASEの時代であってもスバルらしさを磨くことに集中していく」と述べ、独自な生き方を貫いていく考えを示した。

スバルは2005年、トヨタがGMが放出したスバル株の一部を買い取ったことによってトヨタグループ入りした。その後、スバルが北米工場でトヨタ車を生産したり、『86/BRZ』を共同開発するなどしたが、それほど両社で協調していく様子は見られない。部品の共有化などを進めれば、もっと効率的な経営を行えると思えるが、なかなかできない状況が続いている。

「部品の共有化と言っても、うちは水平対向エンジンのAWDが主体のクルマですから、そんなに簡単に部品の共有化はできない」と中村社長は話し、「トヨタもスバルらしさが消えることを望んでいないと思う。われわれとしての強みを生かす。それによって、トヨタにも貢献できると考えている」と協調する。

スバルは提携当時、トヨタの幹部からこう言われた。その幹部はホワイトボードに十文字のグラフを描き、横軸に「乗用か商用か」、縦軸に実用志向かスポーツ志向か」、さらに販売台数をイメージした円を描いた。よく見ると、スバル車とトヨタ車の円が微妙に重なっていた。「これ以上、うちのゾーンの円に入ってくれば、即座にたたきつぶす」。トヨタの傘下にいながら、いかにトヨタから離れるかがスバルの生きる道となった。

とは言うものの、当時とは時代背景が大きく変わっている。自動車業界は100年に一度と言われる大変革時代を迎え、CASEに代表されるコネクティビティ、自動運転、シェアリング、電動化やMaaSに力を入れざるを得なくなった。

「われわれが扱っている業域、商品はMaaSから最も遠いところにあるのではないかと認識している。ただ、これだけテクノロジーの力でモビリティが変わろうとしている中で、知らん顔をするわけにはいかない。モネ・テクノロジーズに参加して、スバルなりにどういうことができるのか、考えていこうと思う」と早田文昭常務執行役員。

また、中村社長も「自動運転についても当社としてのロードマップはあるが、われわれのクルマはお客さまが所有して使うというのがほとんどなので、自動運転は少し先かなと思っている。ただ、プラットフォームとして何らかの準備をしていかなければならないと思うので、そういうところは共同でやっていきたい」と話す。

CASEやMaaSなどに対しては、できるだけ資金を投入せずに他社のものを利用し、スバルらしいクルマづくりに専念する。それが中村社長が考えるスバルの戦略だ。

スバルの決算説明会の様子。左から岡田稔明専務執行役員、中村知美社長、早田文昭常務執行役員《撮影 山田清志》