アンドレア・ドヴィツィオーゾ(Ducati Team)《撮影 伊藤英里》

2019年シーズンのMotoGPは、第15戦タイGPでマルク・マルケス(Repsol Honda Team)が年間チャンピオンを獲得した。続く第16戦日本GPでは、マルケスの優勝により、ホンダがコンストラクターズタイトルに輝いた。

そんなマルケスの後塵を拝しているアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Ducati Team)、そしてそのチームメイトのダニロ・ペトルッチ(Ducati Team)は、今季についてどのように感じているのだろうか。なお、この取材は第16戦日本GPのレースウイーク前、日本人記者向けに行われた。

◆ドヴィツィオーゾ:節目のレースとなったカタルーニャGP

ドゥカティのファクトリーチームから参戦するドヴィツィオーゾにとって、第7戦カタルーニャGPは2019年シーズンのターニング・ポイントとなったレースだったようだ。ドヴィツィオーゾは今季、第16戦日本GPを終えて2勝を挙げてチャンピオンシップのポイントランキングで2番手につけるライダーである。

「いい形でシーズンが始まった。開幕戦(カタールGP)は僕が優勝して、(第4戦スペインGPからの)ヨーロッパラウンドを、ランキングトップで迎えたんだ。シーズン序盤はよかったと思うよ」

しかしドヴィツィオーゾは「バルセロナ(第7戦カタルーニャGP)まではね」と続ける。ドヴィツィオーゾが挙げたカタルーニャGPでは、2周目にホルヘ・ロレンソ(Repsol Honda Team)がドヴィツィオーゾを含む上位陣の3台を巻き込むクラッシュを喫した。ドヴィツィオーゾはこのアクシデントにより、カタルーニャGPをリタイア。ノーポイントでレースを終えた。このとき、マルケスはすんでのところでこのアクシデントをまぬがれ、優勝を果たしている。しかも独走でのパーフェクトな勝利で、二人の明暗がはっきりと分かれてしまったレースだったのだ。

「ここから、マルクを止めることができなくなった。(第11戦の)オーストリアGPでは僕たちは優勝したけれど、あとのレースでは最高でも2位だった」

「ホルヘはめちゃくちゃな走り方をしたわけじゃないんだ。ただ、限界を超えてしまったんだね。(このレースは)僕のチャンピオンシップを考えれば、悪い(影響を与えた)レースだったと思う」

シーズンの流れが、カタルーニャGPでマルケスに傾いた。しかしドヴィツィオーゾが今季、多くの優勝を挙げることができずにいる理由は、それだけではないはずだ。

ドゥカティのマシンは、以前よりコーナーでの旋回性に課題を持っている。これについてドヴィツィオーゾは、今季のマシンについて「コーナー中間については変わっていない」と語った。ドゥカティには加速性能のよさがあるが、今年はホンダが改善によりその差を詰めた。……というマシン事情はあれどドヴィツィオーゾが語るに、今季の状況はそればかりではない。

なにしろ、マルケスが強い。マルケスは今季、第16戦日本GPを終えて、1度のリタイアを除きすべてのレースで優勝または2位表彰台を獲得する驚異的なリザルトを刻み続けている。

「マルクは前進しているんだ。ほかの(ホンダ)ライダーはあのバイク(ホンダRC213V)に苦戦しているわけだから、ホンダの状況を理解するのは難しいけどね。けれどとにかく、マルケスは昨年よりも速くなっている。現状で言えば、僕たちはマルクと戦うのに十分に速いわけじゃないってことだ」

「でもとにかく、チャンピオンシップで僕は2番手につけている。このままシーズンを終えたいと思っているよ」と、2017年から3年連続のランキング2位獲得へ向けてドヴィツィオーゾは語った。

◆ペトルッチ:「マルケスは最強のライダーの一人」

ペトルッチは2015年からドゥカティのサテライトチームに所属して4シーズンを過ごしたのち、2019年からファクトリーチームに加わったイタリアンライダーである。今季の第6戦イタリアGPでは、マルケス、ドヴィツィオーゾを抑えて優勝を飾った。

そんなペトルッチ、今季について「とても大事なシーズンだ」と語る。というのもドゥカティのファクトリーライダーとして1年目のシーズンだからだ。ペトルッチの契約は2019年シーズン1年のみだった。そうした状況も、彼にとって「大事な」シーズンとなったのだろう。ペトルッチはカタルーニャGPでの優勝を含む成績が認められ、サマーブレイク前の7月にはドゥカティとの契約更新を発表し、2020年もDucati Teamからの継続参戦が決まった。

しかし、後半戦に入ってからのレースでは苦戦が目立つ。ペトルッチの話によれば、8月上旬のテストで行った、バイクやライディングスタイルの変更がその要因にあるようだ。ちなみに、ペトルッチはそれ以前からドゥカティのMotoGPマシンを駆るためにライディングスタイルを変えたとも語っている。

「僕はコーナー進入と立ち上がりが得意だ。でも、ときにこのバイクは止めることが難しい。だから、違ったブレーキをしないといけないんだよ。特に、ストットル操作には気をつけないといけない。トラクションが不足しているときには、アグレッシブなことはできないんだ」

また、マルケスの強さにを、ペトルッチはこう評している。「現時点では、彼が最強ライダーのひとりだろうね」

「マルケスに1レースで勝つことはできるんだ。でも、チャンピオンシップで勝つことは難しい」とも語る。確かに、マルケスは常にチャンピオンシップを見据えたレースをしている。優勝できないときはその状況でベストリザルトを獲りに行く。それが高次元で達成されているから、チャンピオンシップでトップをひた走ることができているのだ。さらに、ペトルッチはマルケスの調子に波がないことも強さの要因に挙げた。

「マルクは、常に99%の状態なんだよ。彼が万全ならば、100%だ。でも、マルクは悪いときでも99%の状態なんだ。僕はいいときだったら100%だから、(悪いときの)彼を負かすチャンスはあるだろう。でも、僕は完ぺきな状態ではないとき、80%の状態なんだ」

とは言え、ペトルッチは今季、マルケスを抑え1勝を挙げた数少ないライダーの一人だ。残り3戦、ペトルッチが再び上位争いに食い込む姿に期待したい。

MotoGP 第16戦日本GP《撮影 後藤竜甫》 ダニロ・ペトルッチ(Ducati Team)《撮影 伊藤英里》 MotoGP 第16戦日本GP《撮影 後藤竜甫》