三菱 eKクロス、スズキ ハスラー、ダイハツ キャストアクティバ

軽自動車の装備の充実ぶりは目を見張るものがある。メーカーにとっても、軽自動車はもはやメインに使うファーストカーとして、戦略をシフトしている。快適装備や予防安全と衝突安全の装備(ADAS機能)に加え、趣味やアウトドア、ロングツーリング志向の車種も増えている。

そのひとつが、SUVテイストの軽自動車の存在だ。スタイリングだけでなくターボエンジンや4WDといった特徴を備え、アウトドアやレジャーユースにも耐える装備も充実している。このような軽自動車のうち、『三菱 eKクロス』『スズキ ハスラー』『ダイハツ キャストアクティバ』の3車種について、SUV、アウトドアという視点で仕様を比較してみたい。

アウトドアやオフロード走行では、『ジムニー』のような本格的な軽自動車もあるが、ここではSUVの多用途・多目的という視点を優先するため、あえて除外している。

◆三菱 eKクロス:静粛性とマイパイロットでロングツーリング派にオススメ



特徴的なフロントマスクは、それだけでアクティブ軽といってもよさそうだ。3連のLEDヘッドライトが昼夜を問わず存在感を放つ。アウトドアやレジャーユースを重視するなら、ルーフとボディの色が選べるツートンカラー(Mグレードを除く)も、単なる足ではないことを主張する。

エンジンはBR06。軽自動車では一般的な3気筒エンジンだが、ベースブロックはインドなどでダットサンの名前で発売されているリッターカーのエンジンをボアダウンしたものだ(日産デイズも同じエンジン)。そのため、トルクに余裕があり振動や静粛性で他社の軽自動車より優れている。トルクはターボ車が100Nm(10.1kgfm)/2400〜1000rpm、ノンターボが60Nm(6.1kgfm)/3600rpm。馬力がターボ車47kW(64PS)/5600rpm、ノンターボが38kW(52PS)/6400rpm。

もうひとつの特徴は広い車室空間だ。室内長2065mm、室内幅1340mmは比較車種の中では一番広い。ドライバーは通常のポジションをとっても、後席で大人が余裕で足が組める広さだ。シートアレンジで荷室も最大限に使える。運転席・助手席周りをはじめ、後席のドリンクホルダーやアンダートレイなど、細かい収納スペースが多いのも家族旅行ではうれしい特徴だ。

開発陣がこだわったという本格的なルーフレールがあるので、アフターパーツを含めてアウトドアや趣味関係の積載にも困らないだろう。純正アクセサリーでも、ルーフラック、自転車用ラック、サーフボードアタッチメント、スキー・スノボアタッチメントと多様で、かなりしっかりしたものが用意されている。

eKクロスは、日産のプロパイロットと同じもの(マイパイロット)がメーカーオプションで設定できる。軽自動車だからといって性能に違いなく、リーフやセレナなどで実績のある運転支援が提供される。車室内の静粛性と相まって高速道路のロングクルージングもストレスなく移動できる。ロングツーリングや高速道路移動には強力なアドバンテージとなる。

◆スズキ ハスラー:キャンプなどアウトドアのニーズを満たしてくれる



eKクロスよりずっとポップなフロントマスクで、いかにもアウトドアレジャーを主張しているのがハスラーだ。エンジン(R06A)は最大出力はターボ車が47kW(64PS)/6000rpm。ノンターボが38KW(52PS)/6000rpm、トルクはターボが95Nm(9.7kgfm)/3000rpmとノンターボが63Nm(6.4kgfm)/4000rpmと、eKクロスとほぼ変わらないが、最重量モデルでも車両重量880kgと比較車種の中で最軽量クラスとなる。

トランスミッションがCVTのほかに5MTの設定もある。軽量ボディとマニュアルトランスミッションで、キビキビ走ってくれそうだ。

ボディカラーは、キーカラーのオレンジの他、グリーン、ブルーなど割と発色のよい原色が多い。ボディカラーとコーディネイトできる内装パネルやルームミラーカバー、リモコンキーカバーもアクセサリーとして用意されている。

ラゲッジスペースを有効活用するためのルーフバー、ルーフネット、ラゲッジボード類、リアゲートに取り付けられるターフ、フロントガラスなどの目隠しシェードはピクニックやキャンプでほしくなる装備だ。溝式だがルーフレールもついているので、キャリア類の取り付けも可能。オプションやアクセサリーでアウトドアユースを意識したものが目立つ。

シートアレンジでは、前席と後席座面までのフルフラットが可能だ。インパネまわりのポケットや収納も多いので、ちょっとした軽キャンパーとしても使い勝手がよい。インパネボックスのひとつが、開けると小さいテーブルになるのもポイントだ。助手席をテーブル代わりにするシートアレンジも可能で、運転席と後席でちょっとした家族の団らんまでできそうだ。

◆ダイハツ キャストアクティバ:オフロードも視野に入れたアクティブ派も納得



キャストは、スタイル、スポーツ、アクティバと3つのモデル設定がある。街乗り・ショッピングなどがメインの人スタイル。走りを楽しみたい人のスポーツ。そして、アウトドアやレジャーを楽しみたい人のアクティバという位置づけで、オーナーのニーズによって選ぶことができる。

今回はアクティブユーザーのための比較ということで、アクティバが対象となる。ニーズごとのモデルがあるとはいえ、ベースはキャストという同じ車種なので、比較車種の中ではいちばんオーソドックスな軽自動車という外観だ。

エンジンはKF型。ターボとノンターボの設定があり、スペックはそれぞれ47kW(64PS)/6400rpm・92Nm(9.4kgfm)/3200rpm(ターボ)、38kW(52PS)/6800rpm・60Nm(6.1kgfm)/5200rpm(ノンターボ)。

キャストの3モデルは、車両の基本性能は変えず、カラーリングやデカール、インテリアカラー、アクセサリー類の違いで個性を出す戦略をとっている。では、違いは見た目だけかというとそうでもない。アクティバの4WDモデルには、ダウンヒルアシストコントロールとグリップサポート制御という悪路走行や雪道、ぬかるみなどで効果を発揮する機能を搭載している。

ダウンヒルアシストコントロールは、下り坂でブレーキやエンジン出力、CVTを制御して車速を自動的に4km/hから15km/h(設定可能)で下ってくれる機能だ。ドライバーは悪路の急坂でもブレーキ・アクセル・ギア操作は必要なくハンドル操作に集中できる。この機能は、後退時にも使える。

グリップサポート機能は、ブレーキ4輪を別々に制御することで、空転したタイヤに個別にブレーキをかけてトラクションを維持する機能だ。通常、2WDでも4WDでも駆動輪が1輪でもスリップしたり空転すると、そこに駆動力が集中して逃げてしまい、残りのタイヤにはトルクがかからず、発進やぬかるみ脱出ができなくなる。空転しているタイヤに抵抗(ブレーキ)を与えてやれば他のタイヤにもトルクが配分される。この機能は、コーナリング時の姿勢安定にも効果がある。

ダウンヒルアシストコントロールとグリップサポート機能は、ハスラーにも別名称で備わっているが、設定速度が7km/hと固定だ。eKクロスにはグリップサポート機能のみで、ダウンヒルアシストコントールは対応していない。その代わりではないが、坂道発進にブレーキを自動ホールドしてくれる。

◆4WDやターボはどう選ぶか

SUVでもアウトドアをアクティブに楽しむとなった場合、選択ポイントとなるのは雪道や悪路走行を意識して4WDを選ぶかどうか。そして、走行性能を重視してターボ車を選ぶかどうか。

活動範囲に雪道が含まれるなら4WDという選択は有効だ。今回比較したどの車種も、VSCや姿勢を安定させる機能(EBS)がついたABS、トラクションコントロールといった安全支援システムが搭載されている。したがって、FFだからといって雪道で性能が不安ということはないが、4WDの走破性、悪路走行性は状況しだいではメリットとなる。

今回の比較車種を含め、多くの軽自動車の4WDはビスカスカップリングをセンターデフに利用したオンデマンドタイプの4WDだ。普段はFF状態で走行しているが、雪や悪路などで前輪がスリップしだすと後輪に駆動力が伝えられる。

4WDは、車重や燃費でマイナスだが、寒冷地仕様のワイパーヒーター、シートヒーターなどの装備とセットになっている場合もあるので選ぶ価値はある。

ターボについては、好みの問題と思っていいだろう。馬力の差は歴然で、発進加速や全体の動力性能の違いは明らかだが、アウトドアやアクティブライフに、パワースペックは必ずしも重要ではない。燃費よりも上り坂やワインディングでの軽快感を優先させたいならターボ車の選択は悪くない。

三菱 eKクロス 新型《撮影 中野英幸》 三菱 eKクロス 新型《撮影 中野英幸》 三菱 eKクロス 新型《撮影 中野英幸》 三菱 eKクロス 新型《撮影 中野英幸》 三菱 eKクロス 新型《撮影 中野英幸》 三菱 eKクロス《撮影 愛甲武司》 スズキ ハスラー《撮影 太宰吉崇》 スズキ ハスラー《撮影 太宰吉崇》 スズキ ハスラー《撮影 太宰吉崇》 スズキ ハスラー《撮影 太宰吉崇》 スズキ ハスラー《撮影 太宰吉崇》 ダイハツ キャスト アクティバ《撮影 太宰吉崇》 ダイハツ キャスト アクティバ《撮影 太宰吉崇》 ダイハツ キャスト アクティバ《撮影 太宰吉崇》 ダイハツ キャスト アクティバ 4WD