◆トルク感に物足りなさ、多段ATが欲しくなる
試乗した『マツダ3』のセダンは4WDで、パワーユニットは1.8リットル直列4気筒DOHCの直噴ディーゼルターボだった。パワースペックは85kW(116ps)/ 270Nm(27.5kg-m)である。トランスミッションは電子制御6速ATだ。4WDだったこともあり、2.0リットルのガソリンエンジン搭載車より100kgほど重い。そのため印象としては『マツダ2』の1.5リットルターボ車に近かった。
このディーゼルターボは4500回転まで軽やかに回る。また、スムースさも自慢できる美点だ。が、ヨーロッパ製のディーゼルほど実用域でパンチがなく、トルク感に物足りなさを感じた。力強い加速を引き出したいときは早めにシフトダウンするなど、ガソリンエンジンに近い味わいだ。6速ATでは役不足は否めないから8速ATなどの多段ATが欲しくなる。
アイドリングストップは効果が大きく、再始動も無難にこなした。だが、エンジンがかかっているときは、ディーゼル特有のガラガラ音と振動は2.2リットルモデルより大きいと感じる。ヨーロッパ勢も最近は遮音対策を徹底しているので今一歩の煮詰めと対策を期待したい。多段ATを採用すれば、さらに魅力を増すはずだ。とはいえ、燃費性能とドライバビリティはガソリンエンジンを圧倒した。
◆ディーゼルはバランスのとれた上質なファミリーカーという印象
新世代のスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャを手に入れたマツダ3は剛性の高さを武器に、しなやかな走りを実現している。リアサスペンションをマルチリンクからトーションビームに変えているが、正確なハンドリングを身につけ、狙ったラインにたやすく乗せることができた。アクセラと比べて舵を切り増しする場面が大幅に減り、クルマの動きが滑らかだ。また、コントロールできる領域が広い。
とはいえ、FFのガソリン車と比べると、ちょっと鼻先が重く、アンダーステアも強めと感じられた。意のままの気持ちいい走りを楽しみたいという人は、FFのガソリン車がいいだろう。だが、優れたスタビリティ能力と安定性の高さは4WDモデルの魅力だ。バランスのとれた上質なファミリーカーという印象が強いのがディーゼルターボの4WDモデルである。18インチタイヤとの相性もよく、乗り心地の荒さも上手に封じていた。
マツダ3はインテリアもクラスを超えた上質感を実現している。後席の居心地のよさもファストバックを凌ぐ。また、後席はファストバックと同じように6対4分割可倒式で、トランクスルー機構も採用した。スタイリングだってファストバックより伸びやかで落ち着きがある。幅広い層の人たちにおすすめしたいのがマツダ3のセダンだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
【マツダ3 新型試乗】幅広い層におすすめしたいセダンだ…片岡英明
2019年09月24日(火) 12時00分
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