ダイハツ・タント新型と奥平総一郎社長《撮影 池原照雄》

ダイハツ工業は7月9日、軽自動車の主力モデルである『タント』を約6年ぶりに全面改良し、同日発売したと発表した。同社の新しい開発手法であるDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を全面採用した第1弾となる。

DNGAでは、プラットフォーム(車台)やエンジンなどのパワートレインをすべて刷新しており、軽自動車からトヨタ車を含むBセグメント(1.5リットル級)までをカバーしていく。2003年に初代が投入されたタントはスーパーハイトワゴンという軽自動車の新市場を開拓、ダイハツでも最量販車に成長したことから、DNGAを最初に導入した。

新型車は「新時代のライフパートナー」を開発キーワードとし、DNGAの導入による走行安定性や静粛性など基本性能の向上を図った。また、幅広いユーザー層に満足してもらうため、使い勝手や先進・安全技術にもこだわった。

室内を自在に歩ける「ミラクルウォークスルーパッケージ」もそのひとつで、運転席を最大540mmスライドさせるなどで実現した。また、降車する時にインパネのスイッチを押すことで、戻って来た際にパワースライドドアが自動で開く「ウェルカムオープン」と呼ぶ機能を、軽自動車では初めて採用した。先進・安全装備では、渋滞時など全車速域で先行車を追従可能なクルーズコントロールや、縦列駐車も含む自動駐車支援機能などを導入した。

一方、パワートレインでも新機軸が多く、自然吸気のエンジンには高回転域を除いてプラグを2度点火する「マルチスパーク」方式を日本で初めて実用化し、燃費や走行性能の向上を図った。変速機では世界初となるCVT(無段変速機)にギアを組み合わせた「D-CVT(デュアルモードCVT)」と呼ぶ方式により、スムーズな加速性能や燃費改善などにつなげた。

通常のモデルとスタイリッシュな「カスタム」があり、価格は122万円台から187万円台と、装備の大幅な充実を実現したうえで、従来車と同じ価格帯を維持している。月間の販売計画は1万2500台。国内営業本部によると、この1か月での事前受注は1万6000台に達している。

都内のホテルで開いた発表会で奥平総一郎社長は、「DNGAでは『良品廉価』、『最小単位を極める』、そして『先進技術をみんなのものに』―という3つに取り組んでいく。新型タントの基本性能はひとつ、ふたつほどランクが上がったと実感している」と評価した。このジャンルでは、ホンダとスズキのライバル車に苦戦してきたが、今後は「十分戦っていける」とも述べた。

また、DNGAの第2弾について「今年秋に発売するが、その段階でトヨタブランドも供給していく」との計画を明らかにした。このモデルは登録車の小型SUVとなる見込みだ。

ダイハツの奥平総一郎社長《撮影 池原照雄》 ダイハツ・タント新型発表会《撮影 池原照雄》