三菱自動車の益子修会長(左)と加藤隆雄新CEO《撮影 山田清志》

三菱自動車は5月20日、CEO交代についての記者会見を行った。益子修会長兼CEOが6月末の株主総会後にCEOを退き、インドネシアの合弁会社、PTミツビシ・モーターズ・クラマ・ユダ・インドネシア(MMKI)社長の加藤隆雄氏がCEOに就任する。

「業績が回復基調にあり、着実に会社が良くなっている。CEO交代の環境が整った。今年は新中期経営計画の策定が予定されており、この計画の立案および実行を責任の持てる若いリーダーに引っ張ってもらいたい」と益子会長は語り、加藤氏を選んだ理由についてこう話す。

「理由はいくつかあるが、まず私どもは海外で多く事業をしており、一番重要なことはその国で仕事をさせてもらっているという謙虚な姿勢を持っているかということ。そういう意味では、インドネシアの人の意見にも良く耳を傾け、異なる文化にも理解を示し、非常に包容力があるということでCEOに適任だと考えた」

益子会長は昨年秋から後継者問題について考えてきたが、昨年11月にカルロス・ゴーン元会長が逮捕され、その対応などで公表する機会を逸して今回の発表になったそうだ。

新しくCEOに就任する加藤氏は1962年2月生まれの57歳。三重県出身で、1984年京都大学工学部物理工学科を卒業後、三菱自動車に入社。クライスラーとの合弁会社「ダイヤモンド・スター・モーターズ」(米国イリノイ州)の生産立ち上げに参加するなど主に生産畑を歩み、2007年に名古屋製作所工作部次長に。その後、09年ロシア組立事業推進室エキスパート、10年プジョー・シトロエンとの合弁会社PCMA Rus(ロシア・ガルーガ州)に出向、14年名古屋製作所副所長を経て、15年にMMKI 社長に就任した。

加藤氏によれば、これまでの仕事で一番印象に残っているのはロシアでの工場立ち上げとのことだ。「プジョー・シトロエンとの合弁であったので、全く文化が異なり、大変難しいものがあった。最初は企業文化の違いに驚いたが、議論を尽くすことでお互いに理解し合うことができた。これは大変貴重なものになっている」

何かプロジェクトを立ち上げる際には、人数、予算などさまざまなことで衝突したという。その経験はインドネシアでの工場立ち上げに活かされ、ロシアの工場とは対照的に「比較的にスムーズにいった」そうだ。

「今後は益子CEOが掲げた三菱自動車らしさを追求するため、アライアンスの活用と集中戦略で競争力を磨き、スモール・バット・ビューティフルな企業として着実な成長を遂げていく方向性をより一生強固なものにしていきたい」と加藤氏は抱負を述べた。

また、ルノー・日産とのアライアンスについては、「益子会長にリーダーシップを取っていただいて対応していくということで、私はその方針に沿って経営していきたいと考えている」と加藤氏は話していた。

CEO交代会見の様子《撮影 山田清志》