CX-3の開発車両で進化した i-ACTIV AWDを試す《撮影 中野英幸》

マツダは人馬一体のクルマづくりをポリシーにしている。加速から減速、コーナリングまで、運動性能の連携性にこだわり、なめらかな加速度のつながりにこだわってきた。ブレーキやステアリング、アクセルなどの操作感と応答性をバランスさせ、一貫性を持たせることによって人が運転しやすい車両特性を実現したのである。なめらかなG(加速度)のつながりを実現するために、マツダの多くのクルマに採用している新発想の制御技術が「G-ベクタリングコントロール(GVC)」だ。

◆人間中心の考えに基づく制御技術



GVCはドライバーのステアリング操作に応じてエンジンの駆動力トルクを変化させ、横方向と前後方向のGを統合的にコントロールして4輪への接地荷重を最適化する制御技術である。コーナー入り口でステアリングを切ると、エンジンのトルクをわずかに絞って荷重移動を速やかに行い、前輪の接地性を高めて旋回しているときの車両挙動を安定させるのだ。これを進化させたのが「GVCプラス」で、コーナーを脱出するときの車両安定性を高めるためにブレーキ制御を追加した。ステアリングを戻すときに外側の前輪にほんの少しブレーキをかけ、ロールしているときの揺り戻しを減らし、安定方向に導くのである。すでに『CX-5』などに採用され、好評を博しているが、次期『マツダ3』(日本ではアクセラ?!)にもGVCプラスの搭載を予定しているのだ。

このマツダ3は、FF車のほか、4輪駆動の「i-ACTIV AWD」も設定した。電子制御式のアクティブ・オンデマンド4WDで、路面状況が変わって滑りやすくなると前後輪のトルク配分を100対0から50対50まで自動的に可変させ、クルマを安定方向に導く。最大の特徴は、各種のセンサーを総動員して路面状況やドライバーの操作を先読みし、前後の駆動トルクを瞬時に連続可変してクルマを安定させるのである。

最新のi-ACTIV AWDは、自然に操作でき、人間感覚に合ったAWDだ。そこで人間中心をさらに強化した。具体的には限界域まで意のままにGVC協調制御できるようにし、操縦安定性を向上させている。そのために制御ロジックを統合し、トルクコントロール領域も拡大した。トルク変動を抑えるためにパワーテイクオフダンパーを追加し、リアデフユニットの抵抗を低減するために低粘度オイルを採用している。これらの改良によってトルクコントロール領域が広がり、制御の精度も高められたのだ。また、燃費性能にもメスを入れている。

◆スピードを上げても余裕のあるドライブに…GVCプラス



北海道の雪上コースではGVCプラスを採用した新型マツダ3のプロトタイプ(FF車)のステアリングを握ることができた。このクルマにはGVCプラスのオン/オフスイッチが設けられている。また、i-ACTIV AWDはマツダ『CX-3』を使って現行型タイプと進化タイプの比較を行った。

GVCプラスをオフにしてスラローム走行を試みる。新型マツダ3はシャシー性能と足の動きがよくなっているから、GVCプラスの助けを借りなくてもコントロールできる領域は広がっていた。が、スピードを上げていくとリズムが乱れ、リアも流れるようになる。揺り返しの収まりが悪いから、狙ったラインに乗せるためにはステアリング操作が忙しくなり、最後にはアンダーステアに手を焼いた。

GVCプラスをオンにすると、同じスピードなら安定感、接地感が大きく違うように感じた。ステアリングを戻したとき、ロールしたときの揺り戻しが減り、挙動の乱れは大幅に減っている。スピードを60km/h以上に上げていってもドライバーには余裕があった。

カントリーロードでも舵の利きがよく、コントローラブルだ。コーナーが連続する場所やでも揺り返しが減り、姿勢が安定している。スムースなコーナリングを披露し、ステアリングワークに正確にクルマが向きを変えるからから運転がうまくなったように感じられた。また、ミューの違う路面を走ってもクルマの挙動が安定している。

ちなみに挙動安定制御システムのDSCをオフにしてもコントロールできる領域が広がっていた。リアが流れるのをコントロールする楽しさも格別だ。だが、調子に乗って速いスラロームを繰り返していたら、ステアリング操作が追いつかず、ついにはスピンを喫してしまった。雪道で過信は禁物である。

◆安定しているだけでなくニュートラルな旋回特性…i-ACTIV AWD



CX-3に搭載したi-ACTIV AWDは、新旧で大きな差が感じられた。発進の最初の段階から強力なトラクション性能を発揮し、スルッとクルマが前に出る。スタッドレスタイヤの能力を上手に使い切り、旋回する場面でもドライバーの狙ったラインに乗せやすかった。コーナーからの脱出では前輪へのトルクを上手に戻して旋回時の挙動の収束を早くしている。安定しているだけでなくニュートラルな旋回特性なのだ。

ステアリングを切り込んだときにエンジンのトルクを絞り、前輪に荷重を移動させることによって滑らかなコーナリングを実現している。ターンインではステアリングを切り込む舵角が小さいし、その先の立ち上がりでも動きは滑らかだ。八の字旋回も苦にしない。当然、コーナリング中にクルマが外側にはらむアンダーステアは軽微だから、修正舵を当てる回数も減っていた。

トレース性能が向上し、狙ったラインにたやすく乗せられるから、今までのi-ACTIV AWDより運転がうまくなったように感じられる。前後のトルク配分も今までより後ろ寄りになったようだ。オーバースピードではらんでしまったときの修正コントロールもラクだった。また、安全な走りをアシストしてくれるだけでなく、コントロールする楽しさも大幅に増している。

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