
低く身構えて、全身をブラックに統一したダークカスタム。つまり、ワルっぽくカスタムしたのが、このインディアン『スカウト ボバー』だ。
鋳造アルミフレームに、排気量1130ccのV型2気筒エンジンを積む『スカウト』は、クロームパーツやディープフェンダーでヴィンテージムードを漂わせているのに対し、この『スカウト ボバー』では前後フェンダーを大胆にボブカットしてしまい、サスペンションもリアショックのストローク量を1インチ(76→50mm)短縮するローダウン。シンプルこそベストと言わんばかりに、スタイリッシュさに磨きをかけている。
◆路面を蹴飛ばすかのようなダイレクトな加速感
路面からの衝撃を細かく受け、乗り心地が悪くなっているのではないかと懸念したが、そんなことは一切なかった。ハイスピードのまま大きな段差を乗り上げても突き上げを食らうことはないし、足まわりのしなやかに動く範囲がスポイルされてしまったというネガな印象も受けない。ローダウンされたことなど走り出すと忘れてしまい、最初からこうだったのではないかと意識を改めることができるのだ。
そんなことよりもハンドルが低くなり、ライディングポジションが緩やかな前傾姿勢となったことも影響し、よりスポーティなライディングが楽しめる。水冷DOHC4バルブのショートストロークエンジンは、最大トルクを発揮する6000rpm付近までの加速感が特に力強く、そこを超えてもトップエンドまでさらに気持ちよく回っていく。
不等間爆発を生む挟角60度Vツインはフレームにリジッドマウントされ、乗り手がダイレクトに鼓動感を味わえるのもいい。高いトラクション性能を発揮し、ライド・バイ・ワイヤを採用するスロットルを開ければ、ギクシャクせずに駆動輪が路面を蹴飛ばすような明快なパワフルさが感じられる。
◆脱クルーザー宣言してもいい旋回性の高さ
ロー&ロングな車体が示すとおり、直進安定性に優れる車体だが、クルーザーとは思えぬコーナリング性能を持っているから面白い。「ヨッコイッショ!」と曲がるのではなく、ネイキッドスポーツバイクのようにスッと車体が寝ていくのだ。
ステップ裏のバンクセンサーが路面を擦るのは容易いものの、フロントのグリップ感がしっかり把握でき、フルバンク中も車体が落ち着いていて狙ったラインを外さない。カートリッジ式フロントフォークは節度があって、踏ん張りの欲しいところではしっかり働き、ノンビリ走っているときは滑らかに動いて路面追従性に優れる。リアショックにも言えるが、しなやかな動きがタイヤの接地感の良さをもたらしている。
298mmローターのディスク式ブレーキもシングル仕様ながら効きもコントロール性も申し分なく、ダイヤモンドフレームの車体もカチッと剛性が高く頼もしい。きっとスポーツバイク一筋で、クルーザー経験が少ない人も違和感なく乗れるはず。ノンビリ流すのも楽しいし、ソロシートの座面に右へ左へ荷重をかけて走れば、バイクを操ってスポーツライディングする楽しさもしっかり味わえる。
そろそろ大人のクルーザーに興味津々だが、スタイリッシュさとアグレシッブな走りは外せないという若いライダーにもオススメしたい。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
コンフォート:★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。



















