インディアン チーフテン ダークホース《撮影 三浦孝明》

ものすごい鼓動感と力強さだ。右手のスロットル操作にリニアな反応を見せ、ダッシュも強烈。跨いだときに感じた大きさは、走り出すと忘れてしまっていて意外なほど身のこなしも軽い。

サウンドは歯切れが良く、重低音が効いている。ハーレーダビッドソンか……!? いいや違う、インディアンだ。

今回乗ったのは『CHIEFTAIN DARK HORSE(チーフテン ダークホース)』。『CHIEFTAIN(チーフテン)』シリーズは現行インディアンの上級ツアラーで、スチールグレイの車体色としたスタンダードをはじめ、ブラックパーツを多用した「DARK HORSE(ダークホース)」、トリプルライトやディープフェンダーでその名のとおりビンテージムードを高めた「CLASSIC(クラシック)」、そして上質さやスタイリッシュさに磨きをかけた「LIMITED(リミテッド)」という4機種の布陣となっている。

◆超弩級1811cc、49度Vツインが独特すぎる!!


心臓部は「Thunder Stroke(サンダーストローク)111」と名付けられた排気量1811cc(111キュービックインチ)のVツインエンジン。Vバンク角は45度のハーレー・ビッグツインに対し、こちらは49度と少しだけ開き気味に。古のインディアンモーターサイクルが採用したサイドバルブエンジンを彷彿とさせるシリンダーヘッドカバーのデザインや、下向きとなった排気口も目を惹く。

オーセンティックな空冷OHV2バルブのロングストローク設計で、腰下に配置されたカムシャフトは3本と珍しい。センターカムシャフトだけが2つのカム山を持ち、プッシュロッドを介して前後シリンダーの吸気バルブを開閉する。公式ウェブサイトにはその構造を説明した動画があり、じつに興味深い。

◆電子装備も先進的で、クレバーな一面も


豪快なサンダーストローク111だが、渋滞時などのオーバーヒート対策としてリアシリンダーが一定温度以上になると自動停止させる気筒休止機能を搭載するほか、ライドモード機能によってパワーデリバリーを好みに設定できる先進性も兼ね備えた。

「スタンダード」のほかに、スロットルレスポンスが穏やかな「ツアー」、瞬発力の鋭い「スポーツ」があり、電子制御スロットルを閉じれば走行中でも切り換えが可能となっている。街乗り、高速道路、ワインディングといったシチュエーション、あるいは気分や好みに合わせて使い分ければいい。

その操作は7インチ・タッチスクリーンででき、これもまた賢い。BluetoothかUSBでスマートフォンに接続でき、音楽再生などが楽しめるだけでなく、タイヤ空気圧やバッテリー電圧など車両情報も表示可能。ナビゲーション機能は日本の道路マップに未対応だが、自分の位置と走行している方角が把握でき、これだけでもありがたかった。

道路がどういうふうに通っているのか、まったく知らない土地なら困るかもしれないが、おおよその見当がつくエリアなら自分がいる場所と、どっち向きに走っているというのがわかるだけで、かなり役立つのだ。

◆エンジンをドコドコ言わせて、もっと遠くへ


それにしても、エンジンがパワフルだ。最大トルク161.6Nmを3000rpmで発揮するが、街乗りは2000rpm前後で軽くこなしてしまう。極低回転域から分厚いトルクを発揮し、余裕のクルージング。エンジン回転を引っ張り上げての猛ダッシュも凄まじいが、高いギヤを使ってドコドコ言わせながら走ると心地良い。クルーザーの心臓部はパワーなどのスペックうんぬんより、走っているだけで気持ちいいと乗り手に感じさせることがとても重要だと筆者は思っているが、その点でもサンダーストローク111は秀逸である。

その心地良いエンジンフィーリングと相まって、ライディングポジションもリラックスしたもので、大柄なフェアリングが走行風からライダーを守り、どんな長距離でも疲れ知らずで走って行けそうだ。オートクルーズコントロールも備わっているし、オーディオは速度が上がると自動的にノイズを補正するべく周波数を最適レベルに調整し、スピードが上がっても音がしっかり耳に届く。19年式ではツィーターがミッドレンジから独立し、スピーカーの奏でるサウンドがクリアになって、出力も上がった。

2時間ほど走ってみたが、チーフテンの真価はこうした短時間のテストライドだけでは分からないのかもしれない。ラゲッジケースに泊まりの荷物を詰め込んで、高速道路を延々と走るようなロングライドに出掛けてみたくなる。それほどにコンフォート性に優れ、いつまでも走り続けたいと思わせてくれるのだ。


■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
コンフォート:★★★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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