二輪車事故、受傷部位で多いのは頭部。ヘルメットの重要性が未だ軽視されている(参考画像)《撮影 柳田由人》

◆二輪ライダーとヘルメット

「完全自動運転でだれもが恩恵を受けられる世の中はもうすぐそこに!」と期待している人が私の周囲にあまりにも多いので改めて書くけれど、それは絶対無理。今年(2018年)生まれた子どもは平均寿命が120歳近いらしいので、うーん、その子が生きているうちくらいには実現する……かも……ってとこじゃないでしょうか(勝手な予想)。

でも、勝手な予想をここで堂々と書いちゃう理由は、歩行者対策の遅れである。歩いている人は全員、後頭部かどこかにチップを埋めて位置情報がきちんと把握できるようになれば、もう少し早くなんとかなるかもしれないけれどねえ。

◆二輪車の自動運転は、事故対策は

ところで、日本だけでなく欧米各国では「自動運転の目的のひとつは安全」を掲げているので、歩行者や自転車はとりあえず研究対象になっているものの、問題は二輪車である。実は、二輪車については、研究も対策もプランもどの国からもなんにも聞こえてこない。私の耳が遠いだけ? いや、ほんとに聞こえない。二輪車、あちこちで走り回っていますから対策、必要ですよね?

そもそも、二輪車の事故対策はむずかしい。私もペーパーライダーに落ちぶれ果てたとはいえ、以前は限定解除を果たし日本全国をナナハンで走り回っていた身。二輪車の動きは理解しているつもりだが、あの素早い動きを自動運転の車両に避けてくれというのは、かなり難しいと思う。

自動運転関係なく、二輪車の事故対策はこれまでもさまざま行われてきた。四輪車のなかに紛れても存在がわかるようにヘッドライトを常時オンにしたり、フルブレーキでも簡単にコケないようABSを装備させたり、エアバッグ内臓のライダージャケットなんてのもある。しかし、相変わらず二輪車死亡事故は多い。

その受傷部位で多いのは頭部だ。「ヘルメットさえ、きちんとかぶってくれれば、二輪車の事故なんてあっという間に半減しますよ」という声すら聞こえてくる。

確かに、救命救急の現場を見ても、二輪車の事故と聞いて救命センターのドクターが確認するのは真っ先に「ヘルメットは?」だ。ライダーが全員、きっちりとかぶっていたら、出ない質問である。でも、出る。しかも、真っ先に。そのくらい、ぶつかった衝撃や、跳ね飛ばされて地面に落ちたときにヘルメットが脱げることが多いのである。

脱げる理由は、あご紐を絞めていないから。絞めていてもいい加減に絞めているから。ヘルメットは、かぶっていりゃいいや的に頭に乗せているだけでは身は守れない。

◆とにかく、ヘルメット。しっかりヘルメット。

二輪車の話を書くと、二輪車とは縁のない生活をしている人は「ヘルメットをちゃんとかぶらないライダーは勝手に事故ってろ」的に感じてしまうかもしれないけれど、でもこれ、一般的なドライバーにも大いに関係のある話。

だって、自分のクルマが二輪車とぶつかったとき(どちらに過失があるかは置いておいて)、目の前に倒れているライダーが、ヘルメットがはずれて意識がなくて頭から血を流してその血がどんどん流れ出ているか、「いってー、どこ見て走ってんだよ!」と言いながらかぶっているヘルメットを脱いで、つっかかってくるかぐらいの差がある話だからだ。

どっちがいい?
絶対、後者だよね。

最近は、お椀ヘルメットかぶって暴走する若いライダーは減ったみたいだけれど、その分、体力や反射神経落ちたことに気づかないふりをしているリターンライダーが増殖している。四輪車のドライバーは、ひっかけないよう気を付けていただきたい。そして、ライダーはヘルメットを“しっかりと”かぶっていただきたいものだ。

いまある自動運転技術だって、二輪車の事故なんてほっとんど対応できないし、これからも期待薄。ライダーはとにかく、ヘルメット。しっかりヘルメット。事故っても怪我をしないように、そして、四輪車ドライバーを最悪なパターンの加害者にしないよう、リスクマネジメントをしていただきたいものである。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。