1日1770万人が利用し、69線区、1667駅、5万4880人の社員を抱えるJR東日本。東京を路線網に含む日本最大級の鉄道企業は、テクノロジーでどう革新しどんな未来を描いているか。CEATEC JAPAN 2018 コンファレンスで同社 技術イノベーション推進本部 中川剛志次長が語った。
コンファレンスのテーマは「旅行・運輸業の新たなビジネスモデル 〜 IoTで広がる旅サービスの差別化 〜」。同テーマには、JR東日本のほか、JTB、Airbnb Japan の3社が登壇、「IoT・BigData・AIによる「モビリティ革命」の実現」(JR東日本)など、それぞれが新たなテクノロジーを既存ビジネスに活用する事例を紹介した。
JR東日本 中川次長はまず、2016年に掲げた技術革新中長期ビジョンを紹介。2年前に発表された同ビジョンは、JR東日本公式ページの研究開発(R&D)「技術革新中長期ビジョン」の内容と重複するので、こちらでは省略。「モビリティ」をキーワードとするトピックスに注目した。
JR東日本は、「モビリティ革命」と掲げるように、今回のカンファレンスでは「自動車」という単語が何度も出てきた。UberやBlaBlaCar、notteco、タイムズカープラスといった新しいモビリティサービスを例にあげ、MaaS(Mobility as a Service、所有せず使いたいときだけ支払って利用する)という潮流のなかで鉄道などの公共交通も「しっかりキャッチアップしていかなければならない」(中川次長)と伝えた。
「電車やバス、タクシー、飛行機など複数の交通手段を乗り継いで移動する場合、それらを跨いだ移動ルートは検索できるように、予約や運賃の支払い、決済については利用者にとってまだ手間がかかる。鉄道は、新しいモビリティソリューションに迫られている」
そこで同社はソリューションにむけた大きな取り組みを紹介。その柱は「鉄道事業イノベーション」「従来の公共交通間の協調による一貫輸送」「新しいモビリティソリューションとの統合」の3本だ。
「鉄道事業イノベーションは、顧客志向システム、起業家精神、ビジネスマインド、自動運転、オンデマンド、シェアリングといった考え方。公共交通間の協調一貫輸送は、ドアtoドア、移動時間短縮 STTT(Shorter Total Trip Time)など。そして、ラストワンマイル、ファーストワンマイルなどの新しいモビリティソリューションとの統合をめざそうと」
「今後、普及していくパーソナルビークルのような新しいモビリティと、鉄道がいかに強調していくかが重要になってくるだろう。ドアtoドア、出発地から目的地まで、しっかりサポートできるようにしたい」
そこでJR東日本はまず、モビリティ変革コンソーシアムを2017年9月に設立。「ドアtoドア推進」「スマートシティ」「ロボット活用」の3つのワーキンググループをスタート。130団体が会員になり、18のワーキンググループが実証実験へむけて動き出した。
たとえば、日立やNTTグループはMaaSの検討、DeNAや先進モビリティはラストワンマイルの充実といったドアtoドアWGに取り組んでいる。またシスコシステムズや凸版印刷、日本電気、日本マイクロソフト、京セラ、MS&AD、日本信号などはスマートシティWGに。JREロボや沖電気、積水化学、KDDI、三菱電機などはロボット活用WGで動き出した。
こうした動きのなかでも、直近で注目したいプロジェクトは、JR東日本管内の大船渡線BRT(バス高速輸送システム、Bus Rapid Transit)で、中型バスによる自動運転の技術実証がことし12月から始まること。BRT竹駒駅付近のBRTで専用道(約400m)で、時速40kmの走行試験、駅ホーム部の停車試験、単線すれ違い試験などを実施。またBRTに磁気マーカーを設置し、将来的に自動運転レベル4をめざすという。
またKDDIなどは架線設備メンテナンスや線路内作業安全確認にドローン活用、積水化学らは塗装・素地調整ロボット検証、沖電気などはドローンと測深技術の組み合わせとデータ蓄積などを実施していく。
CEATECコンファレンスで最も大きい会場を埋め尽くし、立ち席が出るほど注目を集めた今回のコンファレンス。JR東日本 中川次長は、「今後、自動車メーカー、輸送サービス業、決済サービス業などとさらに連携を図り、出発地から目的地までのすべてを検索・手配・決済できる「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」の構築へむけて協業していく」と伝え、降壇した。
パーソナルモビリティと連携、出発地から目的地まで検索・手配・決済できるJR東日本のプラットフォーム…CEATEC 2018
2018年10月19日(金) 14時00分