次世代アイウェア「タッチフォーカス」《撮影 佐藤耕一》

三井化学はCEATEC JAPAN 2018に出展し、次世代アイウェア『タッチフォーカス』を展示した。液晶を埋め込んだレンズによって、快適な遠近両用メガネを実現するものだ。

通常の遠近両用メガネは、レンズの上半分を中長距離用とし、レンズの下半分に近接用のレンズを埋め込むことで、近眼と老眼の補正を同時に実現するものだが、『タッチフォーカス』は、メガネのツル部にあるタッチセンサーがスイッチになっており、レンズの下部に埋め込まれた透明な液晶の屈折率を変化させることで、近接用のレンズを一時的に発現させる仕組みになっている。

同社広報グループの大塚美也子氏は、「今年の2月から限定販売を開始し、現在販路を拡大中です。来年には海外にも展開していきます」と説明する。

このメガネは、液晶の分子配列を垂直から水平に変化させることで、屈折率を変化させる技術によって実現した。「薄いレンズのなかに、9層構造の液晶レンズを埋め込んでいます。ここがいちばん難しいところでした」と振り返る。

もともと三井化学はメガネレンズ材料で世界シェア4-5割のトップ企業であるが、今回は自ら最終製品を手掛けることになった。「開発者には、これは絶対に世の中に役に立つ技術だという想いがありました。我々もそれを形にしようということで製品化にこぎつけました」と大塚氏はその経緯を語る。

タッチフォーカスの価格は25万円と決して安くはないが、大塚氏は、付加価値をさらに乗せていくことで魅力をアップさせる方向で考えていると説明する。

「液晶レンズ用の回路を片方のツルに埋め込んだのですが、もう片方が空いているので、例えば骨伝導の補聴器を組み込んだり、心拍数をモニタリングしたり、白内障を予防するような高精度な調光機能などが考えられます」とのことだ。

ツルにあるタッチセンサーに触れると近接用に屈折率が変化する《撮影 佐藤耕一》 バッテリーはツルの耳の部分に仕込まれている。通常使用で1-2週間もつという。《撮影 佐藤耕一》 タッチフォーカスを体験しようと多くの人が三井化学ブースに集まった《撮影 佐藤耕一》