SNSの普及でコミュニケーションは容易に。だが直接声を聞く会話に勝るものはない(画像はイメージ)《写真 Getty Images》

コミュ力と人間力
自動運転だ、AIだといっても、ビジネスの基本は人間力である。人と人をつなぐコミュニケーションを担うものが、手紙やFAX(いつの時代だよ!って、私の新人時代)からメールになり、さらに今ではメールも使わない派が増殖中で、Messengerだ、Slackだと移り変わろうとも、最後はやっぱり人間力なのだと思う。

ちなみに、一部IT業界の方たちに聞くと、Messengerを使うと、メールではいちいち冒頭に書き込む「〇〇さま」とか「いつもお世話になっております」がないので時間を短縮できるのだそうだ。たしかにあれ、書くのも読むのも(ここポイント。メールを読ませるのも相手の時間を奪っている)時間がかかる。その代わり、Messengerは、少し前のやりとりを探すのには不向きなので、私は用途によって使い分けをしている。

さらに一部IT業界の方たちにMessengerとLINEの違いはなにかと聞くと、「画面がブルーだと、誰かにチラ見されたときに、仕事していると思ってもらえる。逆にLINEは(以下省略)」なんだとか。ほお。しかし、この情報も少し前のものなので、数か月単位でどんどん変わる状況からずれているかもしれない。

ただ、いくら使うものが変わろうと、込み入った話やこじれそうな場面では、直接声を聞く会話に勝るものはない。だって、相手が納得しているのか、怒っているのか、表情や声のトーンで微妙な部分をすくい取ることができるのだから。

相手を「どう呼ぶか」
さて、相手との距離をどう保つかに於いて、相手を「どう呼ぶか」は、重要なポイントである。私は仕事がら、一年のあいだにたくさんの方にお会いするけれど、最初にやるのは名前を覚えることだ。「あの」と呼びかけるより「〇〇さん」と声に出したほうが、相手の方の心のハードルを下げてもらえるような気がするからだ。特に、本音を語ってほしいノンフィクション本の場合は、積極的に名前で呼びかけるようにしている(ときどき間違えて地雷を踏んでいる…)。

敬称はどうするかというと、東京消防庁の取材に入ったときは「隊長」とか「士長」とつける。ドクターヘリの取材のときは、医師には「先生」。パイロットは「機長」だ。だけど、クルマの取材や会議などでお会いする自動車メーカーや警察庁や国交省の方々になると「室長」やら「主査」やら「主幹」やら「センター長」やら「課長補佐」やら「参事官」やら「警部補」やら、名前以外に覚えることがありすぎるので、申し訳ない、全員「さん」で勘弁してもらっている。すみません、みなさん。

では、相手の方は私のことをなんと呼ぶかというと、たいていは「岩貞さん」である。それがふつうだと思っているのだけれど、たまに「岩貞先生」と呼ぶ人がいて、ぎゃー、やめてーっ! と、叫びたくなる。学のない私、あなたに教えられるほどえらくありませんから!

なんというかですね、「先生」と呼ばれると「先生と呼んどきゃ、間違いないだろ」的な安易さというか、「先生と呼ばれて嬉しいでしょ、ほれほれ」というバカにされた感があるというか、いえ、呼んでくださっている方々はそんな気持ちではないことは重々わかっているけれど、卑屈でひがみ根性の強い私は、そう受け止めてしまうのである。

ええ、ぜひ、「岩貞さん」で。なんなら「イワサダ」と呼び捨てでも結構です。「岩貞先生」と呼ばれて違和感がないのは、私のノンフィクション本を読んでくれている小学生〜中学生の児童生徒さんくらいですかねえ。

だれでもかれでも「シャチョー!」ってどうなのよ
先日、友人がクルマを買った。彼はそれまで、某輸入車メーカーのクルマを乗り継いでいて、ずっと担当の男性に「〇〇さま」と嫌味の欠片も感じさせないおだやかな対応とともに呼ばれていたらしい。しかし、先日購入したのは仕事用の某国産車で、そこのディーラーマンは、最初から最後まで、「社長、社長、シャチョーッ!」と、声を張り上げ続けたという。

げー、ぜったいイヤ。私など「センセイッ!」と一度でも呼ばれたら、絶対、そのディーラーマンはパスだなあ。そして、当然、友人もげんなり状態だったらしく、でも、クルマはいいので、結局買ったけれど、もしそのディーラーマンが「社長と連呼したから、気をよくして買ってくれた」と、ちょっとでも思っているのなら、即刻、反省文を書いて滝に打たれにいってもらいたい。

もちろん、社長や先生と呼ばれて嬉しい人もいるんだろうけれど、だれでもかれでも「シャチョー!」ってどうなのよ。最初にそう読んだときの相手の微妙な反応は、ちゃんと見ておいた方がいいと思うんだよね。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。