アウディ A7スポーツバック撮影 中村孝仁

試すべきものが多すぎる
まずはじめにお断りしておく。この試乗はあくまでもチョイ乗りである。というのも、試すべきアイテムがあまりに多すぎて、ほんの触りしか試せていないことがその理由だ。

新しいアウディ『A7スポーツバック』は、48Vのマイルドハイブリッド機構を備えたV6エンジンを搭載し、ダイナミックオールホイールステアリングと名付けられた4輪操舵システムを持つ。サスペンションは可変ダンピングサスペンションであり、走行モードは4種のモードからドライバーが任意に設定できる。

ヘッドライトはLEDのマトリックスライトで、車速70km/h以上でハイビームを補完するレーザーライトが照射距離を2倍にする。量産車としては世界で初めてライダー(レーザースキャナーと呼ぶ)を搭載することによって、従来の運転支援に加えてさらに厚みが増し、ターンアシストやサイドアシスト、エグジットアシストなど、これまでにはなかったような機能が追加されている…等々、これでもかというほどの先進技術が満載されたクルマに進化しているのだ。

1時間少々の試乗時間でこれらのことを試すのはまず無理。まして夜間走行もしていないから、ヘッドライトの機能はトンネル内だけに限られて、効果は実感できない等々…。だからチョイ乗りなのである。

今回の試乗はこれも新しくなった『A8』との乗り比べである。このA8に関しては機会を改めるが、いずれのモデルも、従来を大きく上回る大進化を遂げていることだけは報告しておこう。

エンジンを「止める」
試乗開始ではすでにエンジンがかかっていて、実感できなかったが、撮影時にエンジンを止めてみると、インパネがほぼブラックアウトすることがわかった。そこには従来数が多いと他メーカーから指摘を受けていた、スイッチの類が一切ない。全てタッチ操作で行われるようになったということ。まあ、これをマスターするだけでも1時間の試乗では不可能だったから、乗り味のフィールを味わうことと、最近とみに気になっているACCの出来をチェックすること。それにハンドリングのチェックなどがすべてで、使い勝手などに関しては、改めてじっくり試乗で報告したいと思う。

48Vのマイルドハイブリッドとなった3リットルのV6エンジンは、高速走行などでコースティングする際に、従来だとアイドリング状態になっていたエンジンを、何と止めてしまうという。そして信号停車などで減速した際に車速が22km/h以下になると、こちらもエンジンを止めてしまうというので、そのあたりをまず試してみた。

コースティングは結構長い直線路が必要なのか、それなりの直線でアクセルオフにしてみても、タコメーター上のREADYの文字の一つ上にある線のところまでは行くのだが、広報の説明ではコースティングすればREADYになるはずとのことだったので、残念ながらエンジンオフ状態には持っていけなかったようである。

次に停車の際に22km/hでエンジン停止の件だが、こちらははっきり言えば、いつの間にやら止まっている…という印象。そして発進の際のエンジン始動も実に制御が上手くてエンジンがブルンとなるような下品な仕草は、少なくとも試乗の間は一切なかった。

サイズを感じさせない軽快感ある走り
それにしても走りは実にダイナミックである。上信越道をひと区間、距離にして16km程度を高速で走ってみたのだが、とにかくスムーズでシャープな走りを披露する。ステアリングに対する応答性は極めて鋭く、ボディスタイルと相まって実にスポーティーだ。

4輪操舵と4WDのおかげか、車線変更なども実に安定してサイズを感じさせない軽快感がある。ACCの安心感もさすがであった。あくまでも短時間の使用だから、状況もさほど変わらないので一概には言えないが、それでも最先端仕様であることは間違いないわけで、これもじっくりと使ってみたい装備である。

静粛性も非常に高い。大きな開口部をリアに持つファストバックボディながら、骨格の強さを感じさせるのだが、さすがにこの後A8に乗り換えた際は、その違いが露呈したわけだが、それでもA7の良さが否定されることはないと思う。

パーソナルな雰囲気を存分に発揮して、後席の広さも十分。それに大きな開口部のラゲッジスペースはゴルフバッグがほぼ真っすぐ入ってしまうのではないかと思うほど広大で、ユーティリティーにも富む。実に良いクルマに仕上がっている。因みにお値段は、ライバルと目されるメルセデス『CLS450』よりもお高い。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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