画像は電動バイク『LIVEWIRE』のプロトタイプモデルで、実際の生産モデルとは異なる場合がある。現時点で未販売のモデルであり、将来すべてのモデルが日本を含むすべての市場に導入されるかは未定。《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》

この夏、ハーレーダビッドソンが何かと話題になっている。

6月下旬、アメリカの鉄鋼・アルミニウム輸入関税に対する欧州連合(EC)の報復関税を回避しようと、欧州向けの生産を米国から海外に移す方針を明らかにすると、トランプ米大統領が「言い訳にすぎない」「我慢しろ」「白旗を掲げるとは驚いた」とツイッターに投稿し、痛烈批判。「ハーレーダビッドソンは米国の象徴」と称賛していただけに、世界中がその言動に注目した。

沈黙を続けていた同社だが、7月末に新中期経営計画を発表。これがバイクファンらを驚かせている。

◆いよいよ来年登場、EVハーレー!

まず、2019年に電動モデル『LIVEWIRE』をついに発売する。電動ハーレーは2014年6月にプロジェクトが発表され、米国内や欧州などでメディアや一般向けに試乗会を開き、筆者も翌15年3月にマレーシアで乗った。

その時点で、最高速92マイル(約147km/h)、0-96km/h加速4秒以下、満充電3.5時間で100km以上の走行を可能としていたが、市販化となればそれ以上の高性能も期待できる。気になるのはなんといっても航続距離だったが、あれから時間が経ちリチウムイオンバッテリーの高性能化によって、より長い距離が走れるのかもしれない。

画像もすでに公表され、試乗当時にはなかったビキニカウルが追加され、シングルディスクだったフロントブレーキもダブルディスクにグレードアップされている。ミラーに埋め込まれていたウインカーも、ハンドルにぶら下がる一般的なものになっていることがわかる。

この電動シリーズLIVEWIREは、2022年までにバリエーションモデルを増やしていく方針で、スケッチも公開済み。そこにはハーレーダビッドソンのファクトリーレーシングチームが参戦し続けるフラットトラックレースのマシンを模したものもあり、これまた興味深い。電動でダートトラック、そんな時代が間もなくやってくるのかもしれない。

◆“クセが強い”顔に賛否両論!! それも“らしさ”

言ってしまえば、試乗会まで開いていた電動ハーレーの発売は想定内、さほど驚かない。バイクファンらの間で衝撃的なのは、2020年に導入予定という『パンアメリカ1250』と、975ccのストリートファイターモデルだ。これは突如発表されたもので、そのスタイルは従来のハーレーのイメージからはおよそ遠い。

まずパンアメリカ1250は、いま人気のアドベンチャーツアラー。高速道路を快適に走ることができるだけでなく、多少のダートなら行けるというオフロード性能も持ち合わせる。

しかし、一体なんなんだ、この顔は……!? これまであったモデルとはまるで違う独創的なフロントマスクに惹きつけられてしまう。

そういえば、かつてのハーレー歴代モデルたちも、登場したときに「なんだこのデザインは……」と戸惑ったものが少なくなかった。しかし時代が経ってしまうと人気が出てくるから、また不思議なのだ。

たとえば、1980年に初代が誕生した『FLT ツアーグライド』は、大柄なフェアリングに「2つ目」と称されるデュアルヘッドライトが埋め込まれ、まさに「ヘンな顔」でしかなかった。

当初は不人気車の代表例であったが、90年代末に『FLTR ロードグライド』として復活すると人気が出始め、2000年代にはカスタムトレンド「バガースタイル」のベースモデルとして一躍人気モデルに。ロードグライドシリーズは、今となってはラインナップに欠かせない。

他にもビキニカウル付きのダイナやカフェレーサースタイルのスポーツスターなど、ハーレーは生産中止になってから人気が出るというのはファンの間では定説になっている。

『パンアメリカ1250』に関しては、発売すらされていないのに、もうそんなことをファンらの間で言い出し始めているから、その注目度の高さがうかがい知れよう。これまでなかったジャンルへの挑戦であるから、当然かもしれない。とにかく“愛”が熱かったり、こだわりが強いことでも知られるハーレー乗りにしては、電動もアドベンチャーも賛否両論。トランプ大統領のツイッターのように、熱がこもるのだ。

◆ありそうでなかったストリートファイターモデル

そういう意味では、ストリートファイターモデルは比較的すんなり受け入れられそう。マスの集中化が図られた車体をはじめ、倒立フォークやダブルディスクブレーキの装備などこれまでより先進的で、水冷Vツインエンジンの収まりもいい。スタイルに「ハーレーらしさ」「次世代のハーレー」が感じられる。

エンジンは伝統のV型2気筒=Vツインを踏襲しながら、エアクリーナー側からエンジンへ垂直にエアを取り込むダウンドラフト吸気で、これはV-RODやVR1000ですでに実績がある。排気量は975ccとパンアメリカも積む1250cc版もあり、2本立ての模様。ロードモデルは従来通りベルトドライブだが、アドベンチャーツアラーだと小石や砂利の噛み込みを考慮してチェーン駆動となっている。

カスタムへの意欲も相変わらず旺盛で、21年には1250ccのカスタムモデルをデビューさせるとも明かしているから、ワクワクせずにはいられない。スポーツスターがそうであるように、2つの排気量が選べ、純正カスタムパーツがきっと豊富に用意されるのだろう。

◆ついにハーレーも250ccの時代に…!?

そして、画像こそ一切ないものの話題性満点なのが、アジア市場に向けての250〜500ccモデルの新開発だ。今のところ、ハーレーダビッドソンには普通2輪免許で乗れるアンダー400モデルは存在しない(かつてのアエルマッキハーレー等はのぞく)が、インドを皮切りにアジアで生産し販売するという。

じつは日本では売られていないものの『ストリート500』というモデルがインド生産にて存在する。このシリーズの末弟なのか、それともまったく違うジャンルでまた挑んでくるのか、このセグメントでも興味は尽きない。

いずれにせよ言えるのは、これまでのファンだけでなく新規ユーザー、若い世代をいかにして振り向かせようかと計画していることだ。これはどの国のメーカーも同じで、オートバイに限ったことではないはず。生き残りをかけて、ハーレーダビッドソンが本気で変わりつつある。

ストリートファイターモデルのコンセプト。《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 パンアメリカのコンセプトモデル。《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 電動バイクのイメージ《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 カスタムモデルのコンセプト《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 画像はプロトタイプモデルで、実際の生産モデルとは異なる場合がある。現時点で未販売のモデルであり、将来すべてのモデルが日本を含むすべての市場に導入されるかは未定。《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 画像はプロトタイプモデルで、実際の生産モデルとは異なる場合がある。現時点で未販売のモデルであり、将来すべてのモデルが日本を含むすべての市場に導入されるかは未定。《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 ハーレーダビッドソンの電動バイク『LIVEWIRE』プロトタイプモデル《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》 ハーレーダビッドソンの電動バイク『LIVEWIRE』プロトタイプモデル《画像提供 HARLEY-DAVIDSON JAPAN》