パナソニックが開発したTOF方式長距離画像センサーでは夜間でも物体をはっきり検知《撮影 山田清志》

パナソニックは7月3日、このほど開発したTOF(Time-Of-Flight)方式長距離画像センサーについての技術説明会を開催した。この画像センサーは視認性の悪い夜間でも250m先の物体を検知できる、画期的なものだ。

「暗闇の広域での小物体検知は、従来のステレオカメラやLiDARなどのセンサー技術では困難であったが、今回のTOFセンサーは暗い中でも小さく、遠いものが見える技術だ」とセンシングソリューション開発センターセンシングシステム開発部の香山信三課長は説明し、3つの技術によって実現したという。

その3つの技術とは、超高感度な画素技術、高解析度化技術、そして長距離計測画像化技術である。従来のイメージセンサーでは、画素に入った1光子に1電子しか変換できなかったが、それを光電変換領域と倍増領域、信号蓄積部を積層し構成するAPD画素化技術により、25万画素の高解像と信号増幅1万倍の高感度を両立。これによって、微弱な光であっても、光電子を増倍し、暗闇の中でも画像情報が取得できるようになった。

また、センサーに内蔵する10ナノ秒の高速シャッターを駆動する独自の短パルスTOF方式を開発。この技術によって、近距離から遠距離までの複数の距離レンジを合成し、一括で三次元距離画像を取得することができるようになった。

「CCDやCMOSを使ったセンサーの開発は各社で進められているが、従来のCMOSセンサーでは検知できる距離が数10mが限界だった。今回のセンサーは250mの領域まで検知でき、これまで難しかった遠距離の測定ができるようになったのが大きな進化だ」とセンシングソリューション開発センターの田中毅所長は解説する。

また、同センターセンシングシステム開発部の小田川明弘部長は「イメージングからセンシングに使いたい。距離を計測するデバイスはほかにもあるが、画像も分かって距離も分かるデバイスとして違う方向性を提案したい」と話す。

この画像センサーは雨や雪などの悪天候でも大丈夫とのことだが、あくまでも夜間専用で昼間については従来のセンサーを活用して欲しいという。パナソニックではこの画像センサーを車載や道路監視、工場監視など多様な用途に展開していこうと考えており、2019年度にサンプル提供、21年度までに顧客提案活動を開始していく計画だ。

(左から)パナソニック センシングソリューション開発センターセンシングシステム開発部の香山信三課長、同センターの田中毅所長、同センターセンシングシステム開発部の小田川明弘部長《撮影 山田清志》