初代『コンパス』は、まだクライスラーがフィアット傘下ではない時代に登場した。かわいい丸目のヘッドライトが特徴的だったが、ブランドイメージに合わず、後半は『グランドチェロキー』に似たマスクを採用した。
2代目となったコンパスは、好評だったグランドチェロキー似のデザインを踏襲。エクステリアを見ただけでジープブランドのクルマとわかる、伝統の7スロットグリルを採用した。エクステリアデザインは、よりグランドチェロキーに似たスタイルで精悍になった。
だが、従来のジープのイメージを持ったままコンパスに乗り込むと妙な違和感があるのだ。初代はクライスラー時代に開発されたクルマで元々ジープの血縁からも遠い存在だったが、2代目はイタリアのフィアットグループ入ってからのモデル。エクステリアはジープそのものだが、ドライブするとフィアットのテイストを感じる。
それをもっとも実感するのがエンジンを中心にしたフィーリングだ。これまでのジープのイメージは低速トルクを重視したエンジンフィールで、どちらかというと低速域で力強さを感じるタイプだった。コンパスに搭載される2.4リットル直4エンジンのネーミングは「マルチエア」。この名前からもわかるようにフィアットの油圧バルブ機構が使われているユニットだ。
アクセルを踏み込むとエンジン回転数が上昇するのに合わせて元気になり、中高回転域からパワーが出てくる感じでとても軽快なフィール。この吹き上がり感全体が、ジープというよりフィアットの血を色濃く感じる最大のポイントだ。その軽快な吹き上がり感をより強調するのが、リミテッドに組み合わされる9速AT(他グレードはFFに6速AT)。ギヤがクロスしているためエンジンが軽く吹き上がるのを助け、実際の加速感も軽快になっている。ただし、トップの9速には日本道路事情では入ることがないのが残念。
各部の操作感もジープというよりフィアットのイメージで統一されているように思う。操作感は基本的に軽い。特にステアリングの操舵力は軽く、ジープの重厚というイメージではない。ジープブランドのクルマといえども、やはりフィアットの傘下に収まるとこのようなフィールに仕上がるようだ。
軽い操作感や軽快な走行フィールが悪いわけではなく、従来のシープを知るユーザーがコンパスに乗ると別ブランドのクルマに乗ったように感じるはずだ。じつは今回と同様な印象を現行型のジープ『レネゲード』でも感じていた。レネゲートはフィアット『500X』をベースにしているため、さらに軽快な仕上がりになっているのが特徴。そういう意味ではレネゲードやコンパスは、新時代のコンパクトジープのテイストを構築している途中なのかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
丸山 誠|モータージャーナリスト/AJAJ会員
自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。キャンピングカーやキャンピングトレーラーなどにも詳しい。プリウスでキャンピングトレーラーをトーイングしている。
【ジープ コンパス 試乗】「コンパクトジープ」にフィアットの血を色濃く感じる…丸山誠
2018年04月28日(土) 12時30分
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