UL Japan 山上英彦代表取締役社長《撮影 雪岡直樹》

米国イリノイ州ノースブルックに本社を置く、第三者安全科学機関 UL Inc.の日本法人、UL Japan 。その山上英彦代表取締役社長が、UL Japan の2017年までの実績・統括、そして2018年の戦略分野について語った。

山上氏は冒頭、米国本社と同じ事業の方向性について、製品サービスレベルから、組織や企業へのコンプライアンス・ソリューションへと範囲を拡大させていくことを伝え、2017年のULグローバル実績について次のように語った。

「2017年は、戦略分野への投資と能力拡大に積極的に取り組んだ。4月のエマーゴ社(医療機器規制・認可取得サービス業)買収、11月のケムアドバイザー社(化学物質法規制データベース)買収、そしてドイツ2拠点がダイムラーAGから材料試験の認定試験所として認められたことが大きい」。

山上氏は、2017年の自動車関連事業をはじめ、ヘルスサイエンス事業などの好調に加え、ULソフトウェアビジネスユニットなどを創設したことを強調。

また、2018年の戦略分野のひとつに、自動車関連をあげ、EHVチャンバーの国内初設置や、サイバーセキュリティ対策、自動車関連材料の評価などを強化していくと伝えた。

同社が国内で初めて稼働させるEV・HV用試験設備「EHVチャンバー」は、欧州メーカーが要求する車載高電圧製品むけ電気試験にも対応し、最新の車載関連試験をワンストップで完結できる設備だ。今夏8月から稼働する予定で、「すでに複数のオーダーが入り、準備しているところ」という。

こうしたモビリティ関連事業を UL Japan が強化していく背景には、環境規制の厳格化や、電装化・軽量化の加速、新興国を中心とした輸出先の拡大、国内試験場設備の慢性的不足などがある。

「EVやHV、PHVなどとその周辺の環境規制や電装化だけじゃなく、化学材料などを含めた各規制をクリアしながら、コンプライアンスを構築していくことが求められる」(山上氏)。

山上氏はさらに、2018年の戦略分野のひとつに、試験・検査・認証も強調。「新しい技術や新業態の参入などにも対応すべく、EMC(電磁両立性)や無線分野のスコープを拡大させる。また、Industry 4.0(ドイツ推進による「情報通信技術の製造分野への統合」)への対応や、グローバルエリアでの試験・検査・認証を強化していく」という。

また、V2H(Vehicle to Home)などが暮らしのなかに浸透し始める時代にむけ、同社は最新版ワイヤレス給電規格 Qi EPP(Extended Power Profile)対応試験装置を導入。

同社コンシューマーテクノロジー事業部の橋爪正人事業部長は、「今後はスマートフォンだけでなく、家電、医療機器、家具、クルマなど、さまざまな分野でワイヤレス給電が活用される」と伝え、最新規格で定義されている最大15WむけEPPへの対応が可能となった同社設備について、こうアピールした。

「今回、15W向けEPPへの対応が可能となり、Qi規格を中心に注目が集まるワイヤレス給電の市場ニーズに応えられる。ワイヤレス給電が拡大していくなか、これから開発されるさまざまな製品を、スムーズに市場に送り届けられるよう、幅広くサポートできる体制を整えていく」。

CISPR 25:2016 Edition4 Annex I 対応EV/HV用試験設備「EHV Chamber」《画像 UL Japan》 UL Japan コンシューマーテクノロジー事業部の橋爪正人事業部長《撮影 雪岡直樹》 UL Japan 事業説明会《撮影 雪岡直樹》 UL Japan 事業説明会《撮影 雪岡直樹》 UL Japan 山上英彦代表取締役社長《撮影 雪岡直樹》 UL Japan 事業説明会《撮影 雪岡直樹》 UL Japan(参考画像)《撮影 吉田瑶子》