SUVに乗り、SUVの目線で街中を走っていると、改めて同じ目の高さのSUVが多いことを実感する。コンパクトクラスからプレミアムクラスまで、まさに百花繚乱といっていいほどだ。
そんな日本市場に投入された新型ジープ『コンパス』。このクルマに接して感じるのは「ああ、オーソドックスなクルマだな」ということ。
『レネゲード』より全長+145mm、ホイールベース+65mmの余裕を持たせつつコンパクトなボディは親しみやすく、最小回転半径はカタログ数値で5.7mあり、おっと思わせられるも、実際にはボディのコーナーが丸く削がれた形状のため、いったん感覚を掴めば扱いやすいことがわかる。ジープながら日本車のような馴染みやすさという訳だ。
インテリアはシンプルかつ質感にも配慮した仕上がり。インパネやドアトリムの上部はソフトな素材が用いられ、ラゲッジスペースのフロアボードを持ち上げるハンドルも、よく見ると指先がかかる内側がラバー処理されている。シートは第一印象で前後席とも“やや硬め”だが、走行中は“足”をよく動かす設定で、決してゴツついた乗り味にはなっていない。
ただしアクセルペダルの踏み応えや、シフトレバーをマニュアル側に倒す際など、日本車や最近の欧州車に較べ、力を要する。このあたりは昔ながらのアメリカ車の仕上げそのものであり、ローカライズもされていない風で、前々段に“オーソドックス”と表現した根拠のひとつ。
エンジンは全車2.4リットルのガソリンで、試乗車(2WD)は6速ATの組み合わせ。任意シフトこそ可能だが、走行モードの切り替え等がつかないシンプルさだ。また安全支援関係の機能も2WD車は標準項目が絞られる。シートヒーターも上級グレードのみの設定だが、このあたりの割り切りは、やや“オーソドックスに徹し過ぎでは?”とも感じる。
走りは軽快な『レネゲード』となめらかな『チェロキー』のちょうど中間のイメージだ。日本市場では、街中を流していると低速ギヤを選んでいる場面が多く、変速はもう少し実情に即してもいいと感じた。が、コンパクトであるがジンワリと加減速を行う信頼感のようなところはジープらしいというべきか。
7スロットグリル(内部の蜂の巣パターンはダミー)や、クロームでペイントを上下2分割させた外観デザインは、スマートで派手過ぎないのがいい。このクルマの素の持ち味を楽しみたい…そんなユーザーなら心地いい距離感で付き合えそうなコンパクトSUVだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
【ジープ コンパス 試乗】良くも悪くも「オーソドックス」なコンパクトSUV…島崎七生人
2018年03月03日(土) 12時00分
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