SUBARUの吉永泰之社長(左)と大崎篤執行役員品質保証本部長《撮影 山田清志》

SUBARU(スバル)は12月18日、無資格者による完成車検査についての外部調査報告書と再発防止策を国土交通省に提出したのを受け、本社は記者会見を行った。その中で、吉永泰之社長は国内販売へ影響が出ていることを明らかにした。

「10月27日に記者会見をした日からテレビコマーシャルを全部自粛している。その前までの販売は非常に好調だったが、今月の受注状況は前年の7割ぐらいになっている。年内は自粛したままと覚悟を決めたところで、とにかくきちんとしようと考えている。まずお客さまのリコール等々にスバルグループ全体で真摯に対応させていただいて、販売活動はその後と考えている」と吉永社長は話す。

そのコスト増については、まだ計算していないそうで、まずはやるべきことをすべてやるという覚悟で取り組んでいるとのことだ。2018年3月期はリコールなどの対策費用が200億円の減益要因となる見込みだが、この数字がさらに増える可能性が高い。

ただ、グローバル販売の6割以上を占める米国市場は相変わらず好調で、72カ月連続して前年同月を上回っている。今回の件による影響を全く受けていないわけだ。そもそも米国には日本のような完成車検査というルールがない。海外からは完成車検査を日本独自のルールとして認識しているようだ。

今回の件でスバルがリコールした結果、不具合は一切見つかっておらず、果たして完成車検査が必要なのかという疑問が残る。この種の制度は戦前、タクシーやバスの安全性確保を目的に始まったもので、今の時代に合わなくなっていると言っていい。このままでは日本の自動車産業、さらに言えば日本の産業全体の競争力を低下させる可能性もある。

AI、自動運転、コネクティッドなど自動車業界を取り巻く環境が大きく変わっており、時代遅れの制度に人を割くよりもそういった分野に人を回したほうが将来のためにも有効ではないだろうか。スバルでは完成検査員が約300人もいる。完成車検査をAIを使ったロボットに任すようにすれば、完成検査員をイノベーティブな仕事に回すことができ、ロボット業界もさらに技術革新が進んで、日本の産業競争力はさらに高まるだろう。

しかし、自動車業界が国土交通省に対してこういうことを言うのは難しい。吉永社長も「当社が決めたルールを当社の社員が守っていなかったことを心から反省すべきであって、制度については社内で論評するなと言っている」と話す。

今回の会見は約2時間にわたって行われたが、吉永社長の言葉は歯切れが悪く、質問を受けてしばらく沈黙する場面もしばしばあった。

冒頭の挨拶で頭を下げる吉永泰之社長(左)と大崎篤執行役員品質保証本部長《撮影 山田清志》