小飼雅道社長

マツダは10月10日、同社の美祢自動車試験場(山口県美祢市)で次世代技術説明会を開き、「HCCI」(予混合圧縮着火)と呼ぶ燃焼方式による新開発ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」を搭載した試作乗用車を試乗を交えてメディアに初公開した。

同社はこのSKYACTIV-Xエンジンを2019年に乗用車に搭載して発売する計画であり、HCCI技術による量産エンジンの実用化は、世界初となる見通し。HCCIのエンジンは、ガソリンを燃料とした混合気を希薄燃焼させるもので、基本は圧縮着火だが、マツダは低温時など一部の条件下のみプラグの火花で着火させる方式としている。このような着火の制御が非常に難しく、実用化が阻まれてきたが、同社は独自の着火制御技術を開発して乗り越えた。

このエンジンは、同社の現行ガソリンエンジン(SKYACTIV-G)より燃費を20〜30%改善できるという。また、トルクも全域で10%以上、最大で30%程度の向上を実現している。今回の試作エンジンは、排気量2.0リットルで、圧縮比は16というガソリンエンジンでは極めて高い数値にしている。乗用車『アクセラ』のハッチバック車に搭載して試乗・公開した。

試作車は同時に、マツダが次世代の車体骨格やシャシーとして開発した「SKYACTIVビークル・アーキテクチャー」も採用し、乗り心地や静粛性などの向上を図っている。試乗では、同排気量で既存のガソリンエンジンを載せたアクセラと比較でき、新エンジンの反応の良い加速や新アーキテクチャーによる車体挙動の安定性能などを明瞭に実感できた。

技術説明会に出席した小飼雅道社長は「SKYACTIV技術の第2世代として開発を進めてきた。燃費性能だけでなく、走りと両立させることができた。当社の2.2リットルのクリーンディーゼルに匹敵する加速感があると思っている」とアピールした。また、新たな車体骨格などによる効果については「高い剛性による重厚感のある走りに加え、コーナリングでのトレース性能も驚くほど高い」と指摘した。

マツダは今年8月に、30年までを展望した技術開発やクルマづくりなどの理念を織り込んだ「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」を公表した。このなかで環境対応では、燃料の採掘から車両走行時までを考慮する「Well to Wheel」での企業平均のCO2排出量を尺度に採用、30年までに10年比で50%削減し、50年には同比90%の削減を図るなどの目標を掲げた。

今回の試作車に織り込んだ一連の新技術は、今月27日に開幕する東京モーターショーにも出展する予定だ。

SKYACTIV-X搭載アクセラ SKYACTIVビークル・アーキテクチャー