トヨタ自動車の豊田章男社長は5月10日に東京本社で開いた決算会見で、社長就任時から提唱している「もっといいクルマづくり」が社内に定着してきたとする一方で、「トヨタのクルマづくりを、より軽く、より低コストなものに変えていきたい」との考えを示した。
豊田社長は、新型『プリウス』から順次導入を始めた独自の新設計思想であるTNGAを通じて「技術開発、生産技術、生産現場を貫くぶれない軸として、もっといいクルマづくりが定着してきたと実感している」と評価した。
さらに「これまでトヨタのクルマは面白くない、特徴がないと評価されることもあったが、走りとデザインについては、お客様からも評価頂けるようになってきたのではないかと思っている」と述べた。
一方で「もっといいクルマを賢くつくるという点では、まだまだ改善の余地があることが見えてきた」とも指摘。
具体例として「もっといいクルマにしたいという思いのあまり、性能や品質の競争力向上を優先し、コストやリードタイムは後回しになっていないか、あるいは『適正販価−適正利益=あるべき原価』という基本原則を徹底的に突きつめる仕事ができているか」などを挙げた。
その上で「開発、生産、調達、営業、管理部門に至るまで、トヨタのあらゆる職場で、お客様目線のクルマづくりが実践できていないのではないかという強い危機感を感じている」と明かした。
そこで豊田社長は「私は、もっといいクルマづくりの原点はコンパクトカーにあると考えている」と述べ、その理由を「より多くの人の移動の楽しさや自由を提供するためにボディサイズは小さくても、安全性や快適な室内空間を実現しなければならない。排気量は小さくても快適な走りを実現しなければならない。そして何よりも、それらを安価な価格で実現しなければならないのがコンパクトカーだからだ」と解説した。
このためトヨタでは2016年4月から導入したカンパニー制で、コンパクトカーを専門に担当するトヨタ・コンパクトカー・カンパニーを立ち上げ、さらに2017年1月には新興国小型車カンパニーも設立し、「コンパクトカーというクルマづくりの基本に立ち返る」ことにしている。
豊田社長は「コンパクトカーを担当するカンパニーが、お互いをベンチマークし、より賢いつくり方を学んでいく。そして、そのカンパニーが、より大きいクルマを担当するカンパニーと競争していくなど、カンパニー同士が切磋琢磨することで、トヨタのクルマづくりを、より軽く、より低コストなものに変えていたい」と強調した。
トヨタ社長「もっといいクルマづくりの原点はコンパクトカー。より軽く、より低コストに」
2017年05月10日(水) 22時30分
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