新型SUVギャラクシー『M9』《photo by Geely》

中国の吉利汽車集団(ジーリー)は、上海で開催された「2025世界人工知能大会(WAIC 2025)」に戦略的パートナーのStepFun社と共同出展し、最新のAI技術と新型車両を公開した。

会場では、ジーカー『9X』やLYNK & CO 『10 EM-P』、ジーリー『Galaxy A7』といった新型車と共に、吉利が推進する「全領域AI」技術体系の成果が披露された。中でも注目を集めたのは、世界初となる人間らしさを備えた車載AIエージェントを搭載した新型SUVジーリー『Galaxy M9』だ。

このAIエージェントには、StepFun社が開発したエンドツーエンド型音声大規模モデルが活用されている。人間の感情を模倣する「エモーショナル・コンピューティング」により、自然な発話や感情表現が可能だ。ユーザーの感情状態に応じて声のトーンを動的に調整するなど、これまでにない高度なインタラクションを実現する。

イベントでは、StepFun社が最新の基盤モデル「Step 3」を発表。さらに両社は千里科技と連携し、次世代スマートコックピット用OS「Agent OS(プレビュー版)」を共同で発表した。AIエージェントに最適化された同OSは、より人間らしく感情的なつながりを感じさせる車内体験を提供する。

吉利は、AI技術の進化を受け、「具現化インテリジェンス」の時代を牽引するべく、「全領域AI」技術体系を推進している。これは車両のあらゆる領域だけでなく、開発から製造、サービスに至るバリューチェーン全体にAIを統合するもので、吉利はこれを完了した世界で唯一の自動車メーカーであると主張する。

この戦略を支えるのが、AIの三大中核エンジンであるコンピューティングパワー、アルゴリズム、データだ。吉利はパートナー企業と連携し、中国の自動車業界で首位となる23.5 EFLOPSの演算性能を持つデータセンターを設立。また、10兆トークンを超えるデータを大規模モデルの学習に活用している。

これらの技術を背景に、知能運転支援システム「千里豪悍(Qianli Haohan)」を開発。2025年第4四半期には、新たなL3対応技術アーキテクチャを実装する計画だ。吉利は将来的に、単なる自動車メーカーではなく「世界最大のロボティクス企業」への進化を目指している。

次世代スマートコックピット用OS《photo by Geely》