全国から会場にマシンが運搬される。時期によっては道で遭遇することも。《写真提供 早稲田大学自動車部》

若者がクルマに触れるきっかけのひとつに、全国の大学に置かれた自動車部がある。学校の体育各部として正式に活動する団体で、部活動として同世代の仲間と整備やドライビングテクニックを学べる貴重な環境だ。

主要な活動は日常の整備と定期的な大会出場。全日本学生自動車連盟が主催する、3つの競技(ジムカーナ、ダートトライアル、フィギュア)を年間を通して争う「総合杯」を目指す大学自動車部が多い。学生、部活動が参加する競技は時代と共に変化しているが、伝統的に歴史あるチャンピオンシップが「総合杯」である。また、その多くの大会はビジターとして観戦ができる。

2024年に開催される主要大会を、その見どころ共に紹介する。

◆ジムカーナ:主要競技中最も参加校の多い大会・個性豊かなチューンドマシン
支部戦・春季より順次開催
全日本戦・8月(鈴鹿)

ジムカーナは専用のコース、あるいはサーキットにパイロンを配置して、指定されたコースを走りタイムを競うもの。車があれば比較的に低コストで練習できるという点で敷居が高くなく、学生にも人気の競技だ。今回、紹介する3競技中、最も参加校の多いのがジムカーナだ。

サーキットやジムカーナの走行会に参加している若者に話を聞くと「○○大学の部員なんです」ということも多い。卒業後、あるいは在学中にJAF主催の全日本大会に出場するドライバーもおり、トップ層の争いは特にハイレベルになる。

現在の競技車両はホンダの『インテグラ』、『シビック』、『CR-X』などのハイパワーFFが主流。軽量化をはじめ、エンジンスワップ(例えばインテグラ用1800ccエンジンをより軽量なCR-Xに載せる)など限られた予算の中でチューンドカーを作成する。これらの他にもバラエティーに富んだ車種、チューンドカーが登場するのも大きな魅力だ。

学生大会では数年の内に、ダートトライアルと共に車両レギュレーションが変更される予定のため、「ネオクラ・ジムカーナ、ダート車」が見られるのは今の内だ。


◆ダートトライアル:アタックは迫力十分・チーム力が試される全力リペア

支部戦・春季より順次、全国の会場で開催
全日本戦・7月末(広島・栃木の交互開催)

ダートトライアルもジムカーナと同じ3人一組(男子)、二人一組(女子)による団体タイムトライアル。オフロード・トラックで土煙を上げながらドリフトしていく様は迫力満点。全日本大会は広島県にあるテクニックステージタカタと那須塩原のつくるまサーキットで毎年交互に開催される。

競技ではマシンに大きな負担がかかり、多くのチームが大会中、整備に追われることとなる。そのため、突発的なトラブルに対応できるメカニックの存在は重要。走行もさることながら、世界ラリー選手権「WRC」のパドックのように整備の様子も一見の価値アリだ。

マシンはこちらも、インテグラやシビックが多いが、ダートラではトヨタ「スターレット」や三菱「ミラージュ」も優勝争いに食い込んで来る。特に超軽量化+ハイブーストの「スターレット」は過激な走りで有名で、一部の学生が憧れるマシンである。


◆フィギュア:超高難易度の駐車バトル・クルマでパズルをする?
支部戦:春季より順次開催(開催地未定)
全日本戦:11月頃(開催地未定)

総合杯に関わる競技、その最後がフィギュア。シーズンの最後置かれるため、例年チャンピオン争いをかけた試合となる。内容は、「デミオ」等のコンパクトカー、もしくは2トントラックを用いた運転技能競技。下の図のような狭いエリアで駐車や方向転換を繰り返しして、ゴールまでのタイムを競うものだ。通例、通り方の異なる二つのコースが予定されており、各チーム2名(女子)または4名(男子)が出場する。


大きな特徴として、規制されたコースの枠に触れたり、設置された障害物に触れると大きなペナルティを負うというのがある(例えば規制線をタイヤが踏むと20秒分など)。

コース図を見ると、通路の幅が1.8メートルや2.2メートルと指定されているのが分かる。運転するトラックのトレッドは1.7mほどなので、僅かな誤差も許されないということだ。

さらに、普通車では助手席側のフロントタイヤが視認不可能なため、見えている運転席側のタイヤなどから情報を得て走ることとなる。大会上位者になればその正確さに加えて、最小の移動距離やボトムスピードを稼ぐラインといった要素を追求することになる。自動車パズルとスピード走行が合わさった競技だ。

◆「総合杯」競技以外にも活動は豊富 年間を通じてモータースポーツに取り組む
ここまで紹介した他にも、大学自動車部ではドリフト競技の「学ドリ」、リアルドライビングシミュレータ「グランツーリスモ」の学校対抗戦「GTCL」、ダートトラックを使った混走の「軽耐久」を始め、「7帝大戦」、「早慶戦」などの大会に取り組んでいる。活動内容クルマと共にも学校によって多種多様だ。最近の若者がクルマとどう触れ合っているのか、それを見るためにも一度会場に足を運ぶとリアルな若者のモータースポーツが見られるだろう。

活動を通じて培った技術を持って、レース界にステップアップしたりメーカーに就職する学生も増えており、モータースポーツや自動車業界の入り口としての役割も果たしているのである。

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