トーヨータイヤ『プロクセス・スポーツ2』《写真撮影 小林岳夫》

3月23日に栃木県のGKNショートテストコースにて、2023年2月、3月に発売されたトーヨータイヤのフラッグシップタイヤ「PROXES(プロクセス)」の試乗会を実施した。

2月に発売されたプレミアムスポーツタイヤの「プロクセス・スポーツ2」、そして3月に発売されたプレミアムコンフォートタイヤの「プロクセス・コンフォートIIs」の2製品を同時に試す機会を得た。まずはプロクセス・スポーツ2のインプレッションをお届けする。

◆敢えて難しい挑戦をし続けることで、タイヤ性能を磨いてきたトーヨータイヤ
少々前置きが長くなるが、このところのトーヨータイヤのブランド戦略は刺激的である。高性能フラッグシップ「プロクセス」をドリフト常勝タイヤに育て上げる一方で、アドペンチャーラリーにも積極的に参加。マッド&スノーで絶大なる踏破性を誇る「オープンカントリー」ではチャンピオンタイヤの称号を得た。

トーヨータイヤは難攻不落な過激なフィールドに自らを追い込み、徹底的に痛めつけることで性能を強化する道を選ぶ。ある意味でマゾステックな茨の道に挑むことで、ハイパフォーマンスタイヤの地位を確立しつつある。

そしてさらにトーヨータイヤは「プロクセス」を世界一過激なサーキットとして恐れられるニュルブルクリンクに持ち込んだ。2年前の24時間耐久レースにトヨタ『GRスープラ GT4』を投入し、昨年はクラス優勝を飾った。着実に戦闘力を高めている。

「グリーンヘル」と呼ばれ恐れられているニュルブルクリンクの北コース(ノルドシュライフェ)の路面は荒れており、平均時速は200km/hに迫る。サーキットだというのに、数カ所のジャンピングスポットがある。タイヤにとって過酷極まりない。

当然ながらそこでのレースを戦うのは困難である。例えばあるエリアだけ降雨があり、一方のエリアの空は青く晴れ渡るといったイレギュラーな場面も少なくない。つまりウエットでもドライでも、時には降雪もあるほどだから、広範な温度タイヤも反応する守備範囲の広い特性が勝利には欠かせないのである。

◆ウェットコンディションだからこそわかる懐の深さと安定感に感動 
試乗日は生憎……、というよりは都合よく雨が降り注いでいた。僕はすでにドライ性能の高さを確認していただけに、雲から降り注ぐ雨はまさに恵の雨だったといえよう。

プロクセス・スポーツからさらに進化した「プロクセス・スポーツ2」は、左右非対称のコンパウンドであり、トレッド面のイン側とアウト側でパターンが異なる。直進時にはミクロレベルで柔軟なコンパウンドが、アスファルトの微細な凹凸、いわば石粒などをガッチリと握るようなイメージで、グリップを確保しつつ、旋回時にアウト側の剛性の高いゴムとバターンデザインが、荷重を力強く支える。

実際にウエット路で激しくスラロームをしても、フロントタイヤの反応は鋭いばかりか、リアタイヤがグリップを確保してくれている。あえてスピンを誘い出すような乱暴なアクションに対しても、スピンする気配がないのだ。

トレッド剛性が高いことから、高い安心感を得ることもできる。ゴムがヨレる感覚がないから、少々乱暴なステア操作も許容してくれる。ウエット路であることを忘れてしまうほどである。ドライ性能はたしかだが、それ以上にウエット路面での操縦安定性には驚かされた。

これこそ、過激なニュルブルクリンクで得た技術を注がれていることの証明だろう。レース仕様はもちろん溝のないスリックタイヤだから、それがそのままストリートタイヤとイコールではないが、時にはスコールが降り注ぐエリアをそのまま走らねばならないこともあるわけで、コンパウンドのポリマーが正しく路面を捉えていることを表している。低中速のコーナリングを繰り返すハンドリング路から最高速120km/hのオーバル形状をもつ外周路まで、安定した性能が確認できた。

ドリフトやアドペンシャーラリーで勝利し、ニュルブルクリンクに積極参加を始めたプロクセスは、モータースポーツにチャレンジする過程で経た経験を着実に市販タイヤに活かしている。だからこその高いウエットグリップなのだ。そう考えるのが自然であろう。

木下隆之|レーシングドライバー 兼 モータージャーナリスト
学生時代からモータースポーツをはじめ、出版社・編集部勤務を経て独立。クルマ好きの感動、思いを読者に伝えようとする。短編小説『ジェイズな奴ら』も上梓。日本・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「心躍るモデルに高得点を与えるつもり」。海外レース経験も豊富で、ライフワークとしているニュルブルクリンク24時間レースにおいては、日本人最高位(総合5位)と最多出場記録を更新中。

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