ヘラを使って制振材を入念に「圧着」している様子《Photo by 太田祥三》

カーオーディオ機器をDIYにて取り付けたいと考えるドライバーが増加傾向にある。当連載は、そういった方々に向けて作業のコツやポイントを紹介している。現在は「デッドニング」作業の勘どころを解説している。

さてここまでは、ドアの内張りパネルの外し方からインナーパネルへの「制振」作業の進め方までを紹介してきた。それに続いて今回は、作業全体における超重要事項を解説する。ポイントは2つある。

1つ目は、「左右のドアで作業内容を同一にすること」だ。

「デッドニング」とはいわば、ドア内部の音響的なコンディションを整える作業であり、つまりは「スピーカーを作る」作業だと心得たい。そのスピーカーには、1つの絶対的な大前提がある。

それは「左右で同一であること」だ。ホームオーディオにてステレオ再生を行う場合、スピーカーは左右で1本ずつが使われる。その1本ずつは、何から何まで同じでなければならない。異なるスピーカーユニットが使われることは有り得ず、ボックスの素材、大きさ、構造等々も完全に一致している必要がある。左右で同一の再生コンディションを確保することが、ステレオ再生の大原則なのだ。

それはクルマにおいても同様。なので左右で異なるスピーカーユニットが使われることはなく、「デッドニング」においても、貼る部材の質と量、切り出す部材の形、貼る場所等々、左右で何1つ異なることなく施工しなくてはならないのだ。

なので、片側のドアに作業をしていく際には、どこに何を貼ったのかをメモするなり写真に撮るなりして、正確に記録しておこう。

またサービスホールを塞ぐときなどには大きな制振材からサービスホールに合わせた形に部材をカットするわけだが、そのような作業をする際には「型紙」を用いて部材を切り出し、反対側のドアへと作業をする際にはその「型紙」を再利用する。裏返しにして使えば、反対側のドアに貼ったものと形が対称の部材を切り出せる。

続いて2つ目の超重要項目を紹介する。それは「圧着」だ。制振材を貼り付ける際にはヘラやローラー等を用いて、ひたすらゴシゴシと強く接着させる必要がある。そうすることで制振効果が高まり、耐久性も高まる。

なお、以前の記事にて説明したとおり「脱脂」も完成度や耐久性に大きく影響する。汚れをしっかり取り除いた上で、徹底的に「圧着」しよう。このことは、くれぐれもお忘れなきように。

今回は以上だ。次回は、内張りパネルへの「デッドニング」の施工方法を説明していく。お楽しみに。

サービスホールに紙を当てて「型紙」を作っている様子《Photo by 太田祥三》