2022年のWECハイパーカー世界王者、#8 トヨタの(左から)平川、ハートレー、ブエミ。《Photo by TOYOTA》

世界耐久選手権(WEC)の2022年シーズン最終戦(第6戦)「バーレーン8時間」の決勝レースが現地12日に行なわれ、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing=TGR)が4季連続となる2冠制覇を決めた。今季のハイパーカー・ドライバー部門世界王座は平川亮ら8号車トリオが獲得している。

今季最終戦のバーレーン8時間レース、最高峰クラスの「ハイパーカー」には5台が出場した。LMH(ルマン・ハイパーカー)規定のマシンは4台で、トヨタ(TGR)の「トヨタ GR010 ハイブリッド」が2台に、シーズン途中から参戦の「プジョー9X8」が2台(プジョーもハイブリッド)。そして旧LMP1規定のノンハイブリッドマシンがベースの「アルピーヌ A480-ギブソン」が1台である。

ハイパーカーの世界タイトルを巡る争いは最終戦まで持ち越されており、ドライバー部門は#8 トヨタ(平川亮組)と#36 アルピーヌ(N.ラピエール組)の両トリオが前戦終了時点で同ポイントの首位に並んでいた(厳密には上位入賞回数の比較で#8 トヨタが首位)。ランキング3位の#7 トヨタ(小林可夢偉組)にも逆転戴冠の可能性は残されているが、実質的には#8 トヨタと#36 アルピーヌの最終戦先着勝負といっていい状況だ。

マニュファクチャラー(チーム)部門の方も、トヨタとアルピーヌの戦いに決着はついていない(こちらはトヨタがかなり有利だが)。

最終戦の予選では#8 トヨタがポールポジションをゲット(1点加算)。そして決勝ではトヨタが#7、#8の順で1-2フィニッシュを飾り、#8 トヨタの平川、セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレーがドライバー部門のハイパーカー世界王座を獲得した(#36 アルピーヌは最終戦3位)。マニュファクチャラー部門のハイパーカー世界王座もトヨタの獲得が決まっている。

今季は最終的に#8、#36、#7が各2勝をマーク。なお、プジョー勢の最終戦は#94(L.デュバル組)が4位で、もう1台(#93)は完走できなかった。

トヨタ(TGR)はWECの“最高峰クラス対象”の世界タイトルを、2018/2019シーズン、2019/2020シーズン、2021年シーズン、そして今季2022年シーズンと、4季連続で2冠(ドライバー&マニュファクチャラー)とも獲得。2014年シーズンにも2冠制覇を成しており、どちらの部門のタイトルも通算5回獲得となっている。

トヨタ8号車トリオのブエミは、2014年、2018/2019シーズンに続き3度目の戴冠。ハートレーはポルシェ時代に2度の戴冠があり、やはり3度目である(トヨタでは初)。そして平川はWECのトップカテゴリーに初のフル参戦となったシーズンに、初王座を獲得したのであった。日本人選手のWEC世界王座獲得は、中嶋一貴、可夢偉に続き3人目。

#8 平川亮のコメント
「今日、我々が望んだ全てを達成することができました。とても嬉しいですし、この瞬間を、本当にその結果に値する働きをしたチームとともに祝いたいと思います」

「まだ実感はなく、慣れるのには時間がかかりそうです。WECをハイパーカーで戦うというのは、全て自分にとって初めての経験で、最初は大変な挑戦でした。自身の参戦初年度であった今シーズン、ルマンで勝ち、また世界チャンピオンになれるとは全く予想していませんでした。それだけに、支えてくれたチームとチームメイトには本当に感謝していますし、このシーズンを戦ったことで成長できたとも思っています」

「今日はチャンピオン獲得の条件がわかっていただけに、とにかくリスクを冒さないことが重要であり、我慢のレースでした。自分の役割は、良いポジションで自分のスティントを走り抜くことであり、それは達成できたので満足しています」

小林可夢偉らの7号車トリオ(可夢偉、M.コンウェイ、J-M.ロペス)は3季連続のドライバーズタイトル獲得こそならなかったが、可夢偉はチーム代表兼任となった最初のシーズンで、チームを2冠に導くという命題をクリアしてみせた。ライバルマシンの数は少なくとも、“レギュレーションとも戦う”位置にあるトヨタにとって、勝ち続けるのは決して簡単なことではない。

#7 小林可夢偉のコメント
「レースでは1-2フィニッシュを果たし、セブ(セバスチャン)、ブレンドン、亮がドライバーズチャンピオンを獲得、チームもマニュファクチャラーズタイトル獲得と、このレースでの目標全てを達成できました。この結果には本当に満足しています。今日も、シーズン中もずっと、チームとドライバー全員が素晴らしい仕事をしてくれました。日本の仲間や、シーズンを通して応援してくれたパートナーの方々にも感謝しています」

「7号車のドライバーとしても、最終戦を勝利で終えられて最高の気分です。ドライバーズタイトルを逃したのは残念ですが、8号車はチャンピオンにふさわしい戦いぶりでしたし、彼らのためにも良かったと思います」

2023年のWECハイパーカー・クラスには、新たにLMH規定車で参戦を開始する予定のメーカー(ブランド)もあれば、LMDh規定のマシンで出てくる予定のところもある。ルマン24時間レースを含め、より活性化した戦いが見られることは確実であり、王者トヨタが強敵増加という状況にどう立ち向かうのか、今から開幕が待ち遠しいところだ。

WECの2023年シーズンは、3月に米国セブリングで開幕する予定になっている(ルマン24時間、富士6時間など、全7戦の予定)。

2022年のWECハイパーカー世界王者、#8 トヨタの(左から)ハートレー、平川、ブエミ。《Photo by TOYOTA》 #8 トヨタGR010(最終戦は2位)《Photo by TOYOTA》 #8 トヨタGR010(最終戦は2位)《Photo by TOYOTA》 最終戦の優勝は小林可夢偉らの#7 トヨタGR010。《Photo by TOYOTA》 トヨタ1-2フィニッシュの表彰台。《Photo by TOYOTA》 トヨタGR010とプジョー9X8の先陣争い。《Photo by TOYOTA》 最後まで王座を争った#36 アルピーヌ。《Photo by TOYOTA》