「ジムカーナ」走行の様子《写真撮影 三浦修嗣》

◆モータースポーツを始めるならここから! 4輪ジムカーナの世界とは
皆様は「ジムカーナ」というモータースポーツをご存じだろうか。

ラリードライバーのケン・ブロック選手がモンスターマシンで街中を派手に駆け抜ける「Gymkhana」シリーズの映像をご覧になったことがある方もいるかもしれないが、日本ではより身近かつ誰でも楽しめる「参加型モータースポーツ」として、独自の自動車競技が展開されている。

競技の内容を簡単に説明すると、ミニサーキットやアスファルト一面の広場に指定された、特設のコースをドライバーが覚え、タイムアタック形式で走行しそのタイムを競うというもの。レースやサーキットアタックとは異なり、速度域の低いコースでの一台ずつの走行という特徴をもつこの競技は、安全かつ経済的にドライビング技術の向上を図れる、モータースポーツの入門競技として長きにわたって親しまれてきた。

ジムカーナの大会や練習会は日本全国で開催されており、AT/MT、スポーツカー/ファミリーカー/軽自動車などを問わず誰でも、どんな車でも参加可能だ。またJAF(日本自動車連盟)公認の「Bライセンス競技」としてラリーやダートトライアルと並び、公式戦がカテゴリー別で実施されている。ちなみにBライセンスを取得するための更なる入門競技として「オートテスト」という大会も各地で行われているので、興味のある方はぜひチェックしてほしい。

今年度からレスポンスのアルバイト編集部員となった元大学自動車部員のモガミも、自動車免許を取得し初めて触れ合ったモータースポーツこそがジムカーナ。大学卒業後も競技を続けており、週末には地方のサーキットやジムカーナ場へ足(とクルマ)を運んでいる。今回はそんな自分も選手として出場した「JAFカップ オールジャパンジムカーナ」大会の模様をご紹介する。

◆ジムカーナ界の甲子園! 年の終わりはJAFカップ
前述のように、ジムカーナの公式戦は全国で開催されており、地区とレベルに合わせて大小様々なカテゴリーに分かれている。最上位には「全日本選手権」、その一つ下には「地方選手権」が存在し、北海道ら九州、そして沖縄まで数多くのドライバーが各地でしのぎを削っているのだが、この2シリーズの上位選手が集結し、シーズンの最後に日本一を賭けて戦う大会こそが「JAFカップ」なのだ。

ダートトライアル競技でも同じく開催され、双方の優勝者はJAFモータースポーツ表彰式へ参加、そこでカップを手にすることができる。この大会への出場を目指して選手権を追う人たちも少なくない、まさに「Bライ競技の甲子園」と呼ぶにふさわしい大会だ。

今年の開催場所は福島県二本松市にある「エビスサーキット」。動物園の東北サファリパークと併設で、数多くのコースを抱えるこの会場は、ドリフトの聖地として世界中のクルマ好きから親しまれており、昨年2月に起こった地震による土砂崩れから復旧を果たした「西コース」の一部が、今大会のコースとして使用された。

◆まずはクルマを用意してコースを覚えよう!
ジムカーナを始めるにあたって最初のカギとなるのが「クルマ選び」と「コースを覚える」こと。車両の駆動方式や排気量、改造可能な範囲によっていくつかのクラス分けがなされており、近年ではパドルシフトや電動パーキングブレーキを有したAT車両限定のクラスも人気を集めている。

信じがたいだろうが、マツダ『ロードスター』やトヨタ『86』/スバル『BRZ』、スズキ『スイフト』といったお馴染みの国産スポーツカーが、ポルシェ『911GT3 RS』やロータス『エキシージ』のようなスーパースポーツとコンマ差の激戦を繰り広げているのだからジムカーナは面白い。大迫力のサウンドで観客を魅了する改造車も立ち並ぶパドックは、まさに壮観だ。

ちなみに自分は1997年式のホンダ『インテグラタイプR』(DC2)で「JG3」クラスに参戦しており、ライバル車両は現行のスズキ「スイフトスポーツ」(ZC33S)。旧車もまだまだ負けていられないが、近年は中古車、部品価格の高騰による維持費の増大に頭を悩ませている(涙)。

ナンバー付きの車両に乗る自分は、自走で大会会場へ赴き荷下ろしを済ませると、当日発表のコース図を見ながら「慣熟歩行」を始める。コース上を実際に歩くことで指定された通り方を覚えつつ、タイム短縮に向けたライン取り等の攻略法を練るのだが、始めたての頃は緊張からか、走行中にコースを忘れて間違えてしまうこと(ミスコース)が多い。コツを掴むまでは苦痛に思えるこの作業も慣れてくると非常に奥深いので、初心者の皆様もめげずに頑張っていただきたい。

今回の大会では金曜、土曜の練習走行を経て日曜日の決勝に臨む3日間のスケジュールとなっており、本番に向けてクルマのセッティングを変更する人や、途中で車両トラブルに見舞われてしまい、修復作業に入る人もいる。走行を終えた選手たちは各々のクルマやドライビングについて、楽しく話に花を咲かせていた。

◆いざ決戦! 1分間の激闘を制するのは誰だ?
日曜日の決勝走行は2本のみの走行で、良かった方のタイムで順位が決定される。慣熟歩行でコースの攻略法を考え、いかに狙った通りの走りができるかが勝敗を左右するのだが、そのためには正しいクルマのセッティング決めと正確なドライビングの両方が求められる。「ヒトとクルマの共同作業」こそが、モータースポーツの醍醐味だと言えるだろう。

ジムカーナでタイムを縮めるために重要となるポイントは、やはり「スピード」と「ライン取り」の2点だろう。可能な限り素早く、クルマを理想のラインで走らせなければならないのだが、無理をし過ぎてコース上の縁石を踏み越えたり(脱輪)、設置されたパイロンと接触してしまうと(パイロンタッチ)、1回当たり5秒のペナルティが課され、致命的なタイムロスとなってしまう。

パイロンの間際でクルマを自由自在に操る「サイドターン」や「スラローム」といった、ジムカーナ特有の運転動作は確かにとても奥深くて難しい。しかしこれらは勝負の決め手となる重要な技術であり、上手に決まるととてもカッコいいので根気強く練習しよう。

◆結果はまさかの優勝! GTドライバーも集まる年間表彰式へ
全17台が集結した、JG3クラスにて出場した編集部モガミ。初出場、初めて走るコースということもあり「表彰台に上がれれば万々歳だなぁ…」と思いながら臨んだ本大会であったが、始まってみると金曜日の練習会から好タイムを維持。決勝ではまさかの優勝という成績を修めることができてしまった。現地で応援・サポートして頂いた皆様、本当にありがとうございました。

この結果により、自分は11月25日に東京の品川プリンスホテルで開催される「JAFモータースポーツ表彰式」に参加できることとなった。Bライセンス競技を超え、スーパーフォーミュラやSUPER GTのチャンピオンドライバーの方々も集まると伺っており、非常に恐れ多いが今から表彰式が楽しみである。

もしジムカーナに興味を持って頂けた方がいれば、是非とも全国各地の会場に足を運び、モータースポーツをお楽しみ頂きたい。全日本選手権及びJAFカップの模様は「ズミーレーシング」様のYouTubeチャンネルから、ライブ配信のアーカイブ映像としてご覧いただけるので要チェックだ。

エビスサーキット/東北サファリパーク入口《写真撮影 最上佳樹》 東北サファリパーク《写真撮影 下村渉》 東北サファリパーク《写真撮影 最上佳樹》 東北サファリパーク《写真撮影 下村渉》 エビスサーキット 入口看板《写真撮影 最上佳樹》 エビスサーキット スライドパーク(旧南コース)《写真撮影 最上佳樹》 エビスサーキット 西コース コントロールタワー《写真撮影 三浦修嗣》 エビスサーキット 西コース 土砂災害の跡《写真撮影 最上佳樹》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 最上佳樹》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 下村渉》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 下村渉》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 下村渉》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 下村渉》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 下村渉》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 最上佳樹》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 最上佳樹》 エビスサーキット 西コース パドックの様子《写真撮影 下村渉》 編集部モガミの設営スペース《写真撮影 三浦修嗣》 編集部モガミの設営スペース《写真撮影 最上佳樹》 競技に使用するタイヤ「YOKOHAMA ADVAN A050」《写真撮影 最上佳樹》 参加車両にトラブルが発生し、トランスミッションを分解する様子《写真撮影 下村渉》 ジムカーナの走行コース図《写真撮影 三浦修嗣》 慣熟歩行の様子《写真撮影 三浦修嗣》 慣熟歩行の様子《写真撮影 三浦修嗣》 編集部モガミの走行(ホンダ インテグラタイプR)《写真撮影 三浦修嗣》 編集部モガミの走行(ホンダ インテグラタイプR)《写真撮影 三浦修嗣》 編集部モガミの走行(ホンダ インテグラタイプR)《写真撮影 三浦修嗣》 表彰台と各地方のフラッグ《写真撮影 三浦修嗣》 JG3クラス 表彰式《写真撮影 三浦修嗣》 表彰盾とJAFカップ《写真撮影 三浦修嗣》 2022 JAFカップ オールジャパンジムカーナ 大会ポスター《写真提供 奥州ビクトリーサークルクラブ》