甲種輸送された時のJR東日本FV-E991系。愛称の『HIBARI』は「変革を起こす水素燃料電池と主回路用蓄電池ハイブリッドの先進鉄道車両」を意味するHYdrogen-HYBrid Advanced Rail vehicle for Innovationの略で、鉄道車両と自動車の技術を融合すべく、燃料電池と蓄電池によるハイブリッドシステムを使用しており、鶴見線や南武線武蔵中原〜尻手〜浜川崎間で試験が行なわれている。《写真提供 写真AC》

JR東日本とENEOSは5月25日、「鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素利用拡大に関する連携協定」を締結したと発表した。

JR東日本では、2050年度に二酸化炭素(CO2)の排出を実質ゼロとする長期目標「カーボン・チャレンジ2050」に取り組んでいるが、その一環としてトヨタ自動車(トヨタ)や日立製作所(日立)と共同で開発した水素ハイブリッド電車の試験車FV-E991系『HIBARI』の実証実験を3月から開始したほか、川崎火力発電所(川崎市川崎区)での水素利活用も検討している。

今回締結した協定では、JR東日本とENEOSが水素ハイブリッド電車と、それに必要な定置式水素ステーションの開発を連携して進めるとしており、首都圏を中心とする鉄道への電力供給でも、ENEOSの拠点がある京浜臨海部から川崎火力発電所へCO2フリー水素を供給し、軽油や都市ガスなどに水素を混焼させCO2の発生を抑える「水素混焼発電」による電力供給を目指すという。

両者はこれらの取組みを通し、鉄道事業とエネルギー事業で培った知見を活かし「製造・輸送・利用全体にわたるCO2フリー水素サプライチェーン構築をけん引することで、脱炭素社会の実現に貢献してまいります」としている。

『HIBARI』の概要。トヨタが開発した燃料電池装置と日立が開発した主回路用蓄電池の双方から供給される電力を主電動機(モーター)に供給する。《資料提供 東日本旅客鉄道》 『HIBARI』に使用されている燃料電池ハイブリッドシステムの概要。水素タンクに充填された水素が燃料電池装置へ供給され、空気中の酸素との化学反応により発電。主回路用蓄電池は燃料電池装置とブレーキ時に生じる回生電力を蓄えることができる。《資料提供 東日本旅客鉄道》 JR東日本とENEOSが共同で開発する総合水素ステーションのイメージ。電車のほか、バスやトラックを含めた燃料電池車や駅周辺施設へもCO2フリー水素を供給する総合的施設とすることが想定されている。《写真提供 東日本旅客鉄道、ENEOS》