スポーツカーにLSDは必須!? 曲がりにくくなるだけじゃない効果[カスタムHOW TO]

デフとか、機械式デフとも言われるLSD。なんかバキバキ音がして曲がりにくくなるという。そんなものがなぜスポーツ走行するには取り付ける必要があるのか、効果効能を解説!

◆曲がりやすくなるデファレンシャルを
キャンセルしてしまうという矛盾がLSD
LSDはリミテッド・スリップ・デフの略。そもそもこの「デフ」という言葉がやっかい。「デフ」とはデファレンシャル機構のことで、スムーズに曲がるためにわざわざ発明された装置。クルマは曲がるときに内側のタイヤよりも、外側のタイヤの方がたくさん回転しないと辻褄が合わない。内輪差というやつである。左右のタイヤが1本のシャフトでつながっていると、物理的にどちらかのタイヤがスリップしないと曲がれないのだ。そこで、その内輪差を吸収するための機構がデファレンシャルなのである。

◆デファレンシャルには重大な弱点がある
それが加速時の空転問題
そんな素晴らしいデファレンシャルがなければ、交差点での左折や、駐車場内での方向転換などができなくなってしまう。しかし、その機構には弱点がある。それはアクセルを踏んだときに片方どちらかのタイヤがスリップすると、駆動力が全部そっちに行ってしまうのだ。これは機構的に仕方がない。サーキットやワインディングでは多くの場合、荷重が抜けている内側のタイヤがスリップしてしまい、そちらが強烈に空転し、外側タイヤは転がっているだけの状態で加速しなくなってしまう。オフロードでも同じで、泥でスリップしたら身動きが取れなくなってしまう。

◆左右の駆動輪をクラッチで繋ぐことで
駆動力を分配するのがLSD
そこで必要な時は左右の駆動輪を直結にしたい。けれども、必要なときだけでいい。それを叶えるためのパーツがLSDなのだ。右タイヤから伸びるシャフトにクラッチが付き、左タイヤからも同様にシャフトにクラッチが付く。その左右から伸びたシャフトの先のクラッチをどのくらいの圧力でもともと押し付けるかが「イニシャルトルク」。加速時だけ摩擦させて駆動力を左右に同じように伝えるのが「1WAY」と呼ばれる作動方式。加速も減速時も摩擦するのが「2WAY」。左右の駆動に差が生まれたときにどれくらいの力でクラッチを押し付けるかは「カム角」で調整できるのだ。これらのセッティング項目を変えることで、必要な分だけ左右のタイヤの回転差を埋めることで、走りやすく、速くすることができる。

◆基本的には加速時に作用すると役に立つが
減速時も作動すると安定感が増す
その出番は加速するときがメイン。イン側タイヤが滑り始めるとカム角が開くことで、左右のシャフトからつながるクラッチを強く押し付ける。それによって摩擦が発生して、アウト側タイヤにも駆動力が伝わる仕組み。アクセルOFF時にも作動するようにカム角が設計されているのが2WAY。減速時に左右タイヤに回転差が生まれると作動するので、リア駆動車での進入時の安定感アップに効果的。ちなみに1.5WAYもあるが、これはこのカム角が加速時に比べて、減速時は効きが弱いものをこう呼ぶだけで、特殊な機構があるわけではない。通常メーカー側の設定でも加速時45°/減速時20°などが標準設定にされていることが多く、1.5WAYとも呼ばれるが2WAYなのである。

◆バキバキ言うのはプレートが滑るから
今どきは音が鳴らないのが普通
LSDといえばバキバキ鳴って恥ずかしいとか、乗りにくいという意見。これはチャタリング音と呼ばれるもので、この作動するときにクラッチプレートがズレるときに起きる現象。しかし、それも今は昔。現代では優れたクラッチプレートの精度、処理、表面処理が開発され、オイルも音がしないでなめらかにLSDが作用するものが、LSDメーカーやオイルメーカーから多数リリースされている。それらを組み合わせて使えば、音がせず、いつLSDが作動しているかもわからないうちに自然と効いてくれるのが普通なのだ。スポーツ走行をするならLSDがないと、クルマ本来の正しいドライビングはできない。イン側タイヤが空転していてはきちんとクリッピングポイントから立ち上がることもできないし、空転したタイヤはダメージでボロボロになってしまう。ちょっと高めの出費だが、走りを楽しむならぜひオススメしたいのがLSDの装着なのだ。

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