三菱ふそうトラック・バス(MFTBC)は5日、カール・デッペン氏が新しい代表取締役社長CEOに就任したことを受け、プレスカンファレンスを開催した。そこで語られたのはやはりカーボンニュートラルへの取り組み。それに関連の深いコネクテッドカーと電動化の戦略だ。
デッペン氏は、ダイムラーグループで中国・アジアやブラジルでの実績があり、今回日本の三菱ふそうのCEOの職につくことになった。日本市場はサプライチェーンも問題(コロナ禍・半導体不足)があり前年比販売台数を落としているが、アジアマーケットでは台湾、インドネシアの躍進により30%増を達成している。
国内では、トラックコネクトの契約台数を順調に伸ばし、eキャンター(小型EVトラック)の導入や走行距離も着実に増えている。これはトラックコネクトによるデータ収集も進み、今後の開発やサービス、WISE System(運行管理システム)との連携などに活用できる重要な資産になることを意味する。同社が展開するディーラー網整備(ミライプロジェクト)では、22年度中に全拠点にデジタルサービスセンター(DSC)を配し、点検修理等の入庫時間の短縮、待ち時間の短縮、カスタマー体験の強化をするとした。
先般、アナウンスされたeキャンターのラインナップ拡充(2トン車クラス、および中型クラスのEVトラック化)について、市販開始日程などはまだ公表できないとしながら、ラストマイルから特装車などEVトラックのアプリケーション拡大を目指す。
ここまでの内容は、いわば既報のおさらいとマイナーなアップデートだ。新しいニュースは少ないが、逆にいえば三菱ふそうとしては、新社長の体制下でもこれまでの戦略を踏襲していくことになるはずだ。
質疑応答では、世界情勢や業界動向を踏まえた質問もだされた。日野自動車による日本版ディーゼルゲートともいえる事件については「事態はMFTBCにとっても非常に深刻と考えるが、他社をコメントする立場にない。国交相には規定の報告書を作成提出の準備を進めている」とした。
世界市場と日本市場の課題、現状は「日本の受注状況は悪くないが、半導体不足他の問題から供給が追いついていない状況がある。世界情勢は非常に懸念している。グローバルではウクライナの影響はいまのところ大きくないが、エネルギーコストの変動が読めないことが問題だ。」という課題認識を示した。
ダイムラーグループは、三菱ふそうを含む全世界でカーボンニュートラル、脱炭素を進めている。これは車両の電動化だけでなく、工場のカーボンニュートラルも目指すものだ。本社がある川崎工場では、工場の排熱発電や建屋の太陽光パネル導入などですでに前年よりおよそ半分のCO2排出力を減らしているという。これを取引先企業にも活動の理解を広げて、バリューチェーン全体でのCO2削減を目指すという。
バス市場への戦略も聞いてみた。BYDや国内ベンチャーが自治体や交通事業者、物流事業者に対して、小型バン、EVバスの攻勢をしかけている。デッペン氏は「バス市場は、コロナ禍により大きな影響を受けて苦しんでいるところだ。回復にはまだ時間がかかりそうだが、戦略はトラックと大きく変わるものではない。ベンチャーのアイデア、動きはとても注視している。セグメントごとのニーズをみながら、適切なテクノロジー、車両を投入していく。」とした。
大型バスについては、現在BEVとFCVの2つのソリューションが有力だ。それぞれ課題はあり、用途ごとに切り分けていくということだろう。小型・短距離もしくは路線バスならBEVが現実的だ。水素ステーションより充電器のほうが圧倒的にリーズナブルだからだ。観光バス、高速バスなどは経路充電・充填ともに課題がある。水素ステーションは、SSや充電器のような偏在はほぼ不可能なので、港湾、巨大トラックターミナル、バスプールのような場所にピンポイントで配置しないと、不特定車両への充填はかなりハードルが高い。
22年は、いすゞや日野が小型EVトラックを市場投入する予定がある。ライバルの参入について聞かれたデッペン氏は「非常にエキサイティングなことだ」とライバル参入による市場活性化に期待しているようだ。ライバルとの差別化については「5年の実車販売の実績がある」とした。「先行する実運用でのデータ蓄積、営業運転のデータに加え、サービスやメンテナンスなどの知見の蓄積も大きい。信頼性はひとつの差別化要素だ。」と自信をのぞかせた。
ディーゼルは? バスは? EVトラックは? 三菱ふそうトラック・バス新社長就任挨拶
2022年04月05日(火) 19時15分