フォルクスワーゲングループジャパン社長兼アウディジャパン ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏《写真撮影 山田清志》

フォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)社長でアウディジャパンのブランドディレクターであるマティアス・シェーパース氏は1月17日、アウディに関する記者会見を行い、今後の日本市場での電気自動車戦略を説明するとともに、新型電気自動車を披露した。

「2021年は夏まではアウディの販売は非常に好調で、前年比で約40%伸びたが、その後は半導体の影響があってトーンダウンしてしまい、かろうじて前年比を超えた1年だった。そんな中でも、新しく導入したモデルがすべて市場からポジティブに受け入れられた。特に『RS』モデルは過去最高を記録、電気自動車の『RS e-tron GT』はすでに2022年分の販売が完売になっている」

シェーパース氏はまず2021年をこのように振り返り、アウディの国内での電気自動車販売を2025年までに年1万台超まで持って行くと発表した。アウディの21年の国内販売実績のうち、電気自動車の占める割合は1.5%だったが、それを22年には7%まで高め、25年まで35%に引き上げる。そのために電気自動車のラインアップを15モデル以上に拡充する計画だ。

「内燃エンジンを搭載するクルマの投入は2025年が最後で、2026年以降はアウディが発表するクルマはすべて電気自動車になる。そして、2033年以降は内燃エンジンの生産をストップする」とシェーパース氏は説明する。

また、現在BEVを生産している工場はカーボンニュートラルで、2030年までにはアウディのすべての工場をカーボンニュートラルにしていく方針だ。そして、利用、リサイクルまでカーボンニュートラルを進めていき、2050年までにCO2排出量ゼロの企業を目指していくという。

そんなアウディがBEVの第3弾として投入するのが、今回披露したプレミアムコンパクトSUV『Q4 e-tron』シリーズだ。電気自動車専用プラットフォークMEBを採用し、全長4.59m、全幅1.87mとQ3とQ5の間に位置するコンパクトなボディサイズながら、インテリア全長はQ5を凌ぎ、室内空間、荷室は上位モデルに敵うスペースを実現している。

パワートレインは、システム電圧400Vのテクノロジーを使用した総容量82kWh(実容量77kWh)の駆動用バッテリーを、前後アクスル間の床下に搭載。リアアクスルに1基の電気モーターを搭載し、後輪を駆動する。駆動用電気モーターは最高出力150kW、最大トルク310Nmを発揮。0-100km/h加速は8.5秒で、一充電走行距離は516km(欧州値)だ。

もちろん最新の安全技術とアシスタンスシステムを搭載している。フロントカメラをはじめ、車体前後に中距離レーダーと超音波センサーを、また車体前後と左右ミラーに計4つの360度周辺環境カメラを内蔵している。

そのほか、従来のアダプティブクルーズコントロールとアクティブレーンアシストを統合したアダプティブクルーズアシストをはじめ、死角を並走する車両を検出するアウディサイドアシスト、後方から近づく自転車や車両をセンサーで監視するエグジットワーニングなど多数の機能を装備している。

価格は599万円から716万円。アウディの電気自動車はこれまで1000万円を超えていたが、「電気自動車が一部の富裕層の乗り物という印象を払拭したい」(シェーパース氏)と価格を抑えた。

そう話すシェーパース氏は電気自動車を取り巻く環境に危機感を募らせているそうだ。というのも、IT業界から電気自動車ビジネスに参入する動きが強くなっているからだ。「彼らの狙いは自動車用のOSの掌握と既存のビジネスをつぶして新しいものをつくっていくこと。われわれOEMメーカーはそのチャレンジを真剣に受け止めて、ファイトバックしないとビジネスがなくなってしまう。今後、生き延びられないOEMメーカーが出てくるかも知れない」とシェーパース氏は話していた。

『Q4 e-tron』とフォルクスワーゲングループジャパン社長兼アウディジャパン ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏《写真撮影 山田清志》 フォルクスワーゲングループジャパン社長兼アウディジャパン ブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏《写真撮影 山田清志》