日産リーフ《写真提供 日産自動車》

SDGsやカーボンニュートラルという言葉がトレンドとなる昨今、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、そしてプラグインハイブリッド車(PHEV)の注目も高まっている。そこで、各自治体のこれらのクルマ購入に対する補助金について見てみよう。

◆最も積極的な都道府県は東京都、EV、PHV、FCVを対象に補助金

電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車の補助金政策で、もっとも金額が多く、積極的な姿勢を示しているのは東京都だ。小池百合子知事が「2030年までに非ガソリン化」の意向を示し、「2021年度(令和3年度)を非ガソリン化元年」と位置付けて、補助金額を増額したことによる。

たとえばEVなら、30万円から45万円へ増額され、これに環境省が進める再生エネルギーによる電力化100%を組み合わせれば、60万円になる。この金額は、PHEVも同じだ。FCVは110万円で、これに環境省の100%再エネルギー化を組み合わせると135万円になる。

ただしFCVの場合、燃料は水素なので、自宅で消費する電力を再生可能エネルギー化することに意義を見出している。再生可能エネルギー100%化とは、戸建て住宅に太陽光発電を設置するほか、再生可能エネルギー100%電力を供給する電力会社への契約切り替えを指す。

◆愛知県は性能を基準に独特の補助金制度

東京都以外に道府県単位で補助金制度を持つのは愛知県だ。EVに関しては、一充電走行距離という性能を基準に補助金額を定めているところが独創的だ。3ナンバーEVの場合、一充電走行距離(km)から200を引き、これに2000円/kmを掛けた額を補助金額とする。5ナンバーEVでは、一充電走行距離に1000円/kmを掛けた金額とするが、上限は40万円としている。

ほかの自治体は、県単位ではなく市町村が個別に補助金を用意している形態が多く、その金額は数万円から5万円程度だ。

◆神奈川県はFCV向けに最大70万円の補助

神奈川県はFCVのみに補助し、EVは対象外となっている。したがって現実的にはトヨタ『MIRAI』への補助といえなくもない。もちろん、対象車種にホンダ『クラリティ・フューエルセル』、メルセデスベンツ『GLCフューエルセル』、ヒュンダイ『ネッソ』が記載されているが、ホンダはすでにクラリティの生産を終了している。輸入車のFCVは、必ずしも多くの消費者の目に留まっていないのではないか。補助金額は、各車に与えられる基準額の1/3で、上限は70万円だ。基準額とは、国の制度で定めた金額を指す。

◆EVから住宅への給電をする設備への補助は複数の自治体が実施

車両以外では、EVなどから住宅や事務所などへ給電を行う、VtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)設置のための補助を行っている自治体が多い。つまり、EVの購入に補助を行っていなくても、VtoHに補助を行うことで、停電時の支援につなげようという、防災を意識した考えの自治体が増えていることを示している。それほど気候変動による自然災害の甚大化に、市町村を含めた自治体が目を向けていることを表している。

◆防災活用などを目的に事業用車両にのみ補助を行う自治体も

また、事業用としてのみに車両への補助を行う自治体もあり、個人だけでなく法人利用を増やしたい、あるいは法人利用を促して地域の防災などと連携したいといった思惑もあるのではないか。

結論として、EVなどの普及は現状でまだ市場の1%を切る水準とはいえ、単に環境車を増やすだけでなく、地域や国としての脱二酸化炭素や防災への意識が自治体に広がりつつあるといえそうだ。

燃料電池自動車:トヨタ MIRAI(ミライ)《写真提供 トヨタ自動車》 三菱エクリプスクロスPHEV《写真提供 三菱自動車工業》 ホンダの燃料電池自動車、クラリティFUEL CELL《写真提供 ホンダ》 メルセデスベンツ GLC F-CELL《写真撮影 中村孝仁》