eVTOLと本田技術研究所の大津啓司社長《写真提供 ホンダ》

ホンダは9月30日、電動垂直離着陸機や分身ロボット、再使用型小型ロケットなど新たな領域として取り組んでいる技術研究を公表した。

これらの新領域の技術開発は、ホンダの三部敏宏社長が4月に行った社長就任会見で言及した「将来に向けた仕込み」の具体的な事例を示したものとなる。

三部社長は就任会見でモビリティを三次元、四次元に拡大していくべく空、海洋、宇宙そしてロボットなどの研究を進めていると明かしていたが、このうち空の分野では『eVTOL(イーブイトール)』と名付けた電動垂直離着陸機の開発を進めているという。

eVTOLは発電用のガスタービンの搭載により航続400kmを実現、パーソナルな都市間移動のためのモビリティとなる。ホンダの執行役常務で、研究開発部門である本田技術研究所の社長も務める大津啓司氏は「空の移動を身近にする」とした上で、「運行サービス、運行システム全体を想定し、機体やPU(パワーユニット)の開発をしている」と述べた。

技術研究所では今後もeVTOLのプロトタイプ機の開発を進め、2025年から2030年までの認定取得を経て、2030年以降での事業化を目指すとしている。

ロボット分野ではバーチャルな移動を可能にするアバター(分身)ロボットに取り組んでいる。大津社長は「4次元モビリティと位置付けている。遠隔操作で時間と空間を超え、人の活躍の舞台を広げる。ASIMOで培った多指ハンド技術や遠隔操作時のAIによる人の意図の理解が強み」と紹介。2030年代の実用化を視野に2023年度中の技術実証を目指して開発中という。

宇宙分野ではすでにJAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同で開発中の燃料電池を技術を応用した月面での循環型再生エネルギーシステムに加えて、アバターロボットの多指ハンドやAIサポートによる遠隔操縦技術などを応用した月面遠隔操作ロボット、さらには1t以下の小型人工衛星打ち上げを目的とした再使用型小型ロケットの開発に着手していることも明かされた。

大津社長は「小型ロケットの開発は若手の技術者の発案によるもの、今も若手の技術者が中心となって開発をしている。創業以来、価値の源泉を目指してきたのは若手技術者の独創的な発想やアイディア。そのような発想や情熱を大事にし、変化の大きな時代の中ではあるが、今を守るのではなく、攻めて未来を創りたい」と述べた。なお小型ロケットは2020年代中の打ち上げを目指しているという。

こうした新領域への取り組みについて大津社長は「燃焼技術、自動運転の安全論証、制御技術、知能化、電動化、軽量化、そして製造を含めた商品化技術など既存事業につながるコア技術を重ね合わせることで実現が可能。単なる夢追いではなく、できるからやっていく」と強調する。

その一方で「100年に1度の大変革期と呼ばれている中で、自動車を造り、二輪を造り、汎用、ジェットもやっているという今のこの業態で未来が明るいのかというと、それはないと思っている。既存事業の盤石化は電動化を含めてしっかりやっていくが、大変革期を乗り越えながら新しい事業を考えていく。今の事業にしがみついていくということではないと思っている」との危機感ものぞかせていた。

ホンダ eVTOL《写真提供 ホンダ》 ホンダ eVTOL《写真提供 ホンダ》 ホンダ eVTOL《写真提供 ホンダ》 ホンダ eVTOL ガスタービン《写真提供 ホンダ》 ホンダ eVTOL ガスタービン《写真提供 ホンダ》 ホンダ eVTOL ガスタービン《写真提供 ホンダ》 ホンダ・アバターロボット《写真提供 ホンダ》 ホンダ・アバターロボット《写真提供 ホンダ》 ホンダ JAXA 共同開発中の月面での循環型再生エネルギーシステム《写真提供 ホンダ》 ホンダ JAXA 共同開発中の月面での循環型再生エネルギーシステム《写真提供 ホンダ》 JAXAが描く日本の国際宇宙探査ロードマップ《写真提供 ホンダ》 本田技術研究所の大津啓司社長《写真提供 ホンダ》