
新型コロナウイルス感染症の流行によって、人々のライフスタイルが変わってきた。ヤフーのデータソリューション事業本部では、コロナ禍における車のニーズの変化と、ワクチン接種が進み雰囲気の変わりつつある中で起こっている潮流について、分析した。
主に「Yahoo!検索」のビッグデータを分析したところ、コロナ禍で「中古車」や「軽自動車」「キャンピングカー」「車中泊できる車」への関心が高まったいっぽう、ドライブレコーダーやカーナビ、新型モデルなどの検索数が減少している。電気自動車、EVへの関心は高まりつつあり、2021年12月の“ガソリン車禁止”という報道を機に、さらに関心が高まった。そして車のリセールバリューへの関心も高まっているという。
ヤフー、データソリューション事業本部の新庄匠さんが7日、自動車業界向けヤフー・データソリューションセミナー(オンライン)で解説した。
◆コロナの前後で増えたニーズ、減ったニーズ
コロナ前とコロナ後の検索傾向を比較して、大局的に何が変化したのか。まず車に関連するキーワードを機械的に集め、各キーワードの検索量をコロナ禍の1年間(2020年3月〜2021年2月)までとその前年(2019年3月〜2020年2月)で比較した。増減した主なキーワードは次の通り。
増加:中古・軽自動車「軽自動車 中古」
増加:アウトドア「車中泊に適した車」
増加:コストの見直し「車 維持費」
減少:レコーダー、ナビ「ドライブレコーダー 人気」
減少:新型。さまざまな車の前における「◯◯ 新型」
減少:お出かけ、旅行「成田空港 駐車場」
変わらず:消耗品「車 オイル交換」
変わらず:固定費まわり「自動車保険」
変わらず:メーカーへの関心「トヨタ」
分析結果を見ると、感染拡大に配慮したアウトドア志向の拡大や、不安定な社会事情を映すコストの見直しといったものに関心が増えているものの、中古自動車など自動車ニーズ自体は減らなかった。減少した「〇〇 新型」について新庄さんは、「一時的に人々の関心が新型→軽/中古車に移っている可能性が考えられる」という。固定費や消耗品関連の検索数は大きく変わらない。
コロナ禍はさまざまな影響を社会にもたらしたが、クルマという生活必需品へのニーズが揺さぶられるような事態にはならなかった。
◆これからのトレンドは?:リセール
いっぽうで、維持費や補助金関連の検索は大きく伸びているため、各種コスト見直しに迫られている人が一定数いることも見受けられる。
ヤフー知恵袋「新車」カテゴリにおける質問回答文の2021年と2019年の傾向を比較しても、車の購入で資金面を気にする傾向が高まっているという。「不安定な世の中になり、自身の資産について考える人が増えた」と新庄さん。
そんな中、興味深い検索キーワードが「リセールバリュー」だという。リセールバリューに関する検索キーワードの検索数推移は、日本で新型コロナウイルス感染症が深刻になってきた2020年5〜6月ごろから増えている。
リセールバリューに関心がある人の特徴キーワード分布抽出すると、リセールバリューに関心がある人=「リセールバリュー 車 ランキング」と検索した人の特徴スコアが高いキーワードは「残価率の高い車」「ハリアーハイブリッド」「ゲレンデヴァーゲン」となる。いっぽうリセールバリューに関心がない人=「車 ランキング」と検索した人の特徴スコアが高いキーワードは「おしゃれな車」「オシャレな車ランキング」「モテる車」などとなる。
◆これからのトレンドは?:電気自動車
一般的なイメージとして、ここ最近、「電気自動車」についての関心が急激に高まってきているようだ。実際はどうなのか? 検索数の動きで見ると、電気自動車に関する検索はじわじわと増えてきているが、急激に盛り上がっているほどではない。これは「EV」などの検索傾向でも同様だという。
いっぽう最近6年半ほどの間に、検索数が大きく増えたタイミングがいくつかある。中でも2020年12月3日に大きく上昇した。これは「ガソリン車の新車販売が2030年代に禁止される」という報道によるものだ。このタイミングで過去最大の関心が生まれ、「日本人の自動車に対する意識の変化の潮目になった」と新庄さんは注目する。
その他の環境に関わる検索キーワード群の検索数についても、2020年後半から関心が高まり、一時的な上昇ではなくその後も高い水準で推移している。2020年後半から環境に対する意識のレイヤーが一つ上がったと解釈できそうだ。
では、ガソリン車を保有している人たちの関心はどこへ向かっていくのか。「ガソリン車 いつまで」と検索した人の特徴スコアが高いキーワードは「ハイブリッド車」「PHEV」だ。また、「電気自動車」と検索した人の特徴スコアが高いキーワードは「EV自動車」「EV車種」となった。
新庄さんは「現在ガソリン車に関心がある人は今後、一足飛びに電気自動車に移行するのではなく、中間のハイブリッド車を検討していくのではないか」と予測する。




