スズキの鈴木修会長《写真提供 スズキ》

スズキは5月13日、2021年3月期の連結決算をオンライン会見で発表した。期初に主力のインド市場がコロナ禍で打撃を受けたものの、その後はもち直し、純利益は前期比9.1%増の1464億円と3期ぶりの増益を確保した。

今期(2022年3月期)の予想は、再びインドでの感染拡大による影響もあり「現時点では業績予想をするうえでの未確定要素が多い」として開示を見送った。

前期の四輪車グローバル販売は10%減の257万1000台となった。最大シェアをもつ主力市場のインドは第2四半期から回復を見せ、スズキの販売も8%減の132万3000台ともち直した。日本は4%減の64万7000台だった。

営業損益段階では販売の減少に伴う減益要因が1085億円に及んだ。また、触媒用の貴金属など原材料費の高騰に伴う影響は294億円に達した。さらに為替もインドルピーなどほぼ全通貨に対して円高となり、全体で149億円の減益に作用している。一方、固定費など諸経費の削減による増益要因は734億円となった。

この結果、営業利益は9.6%減の1944億円と3期連続の減益となった。コロナ禍による工場操業停止に伴う損失154億円(固定費相当額)は、営業損益から特別損失に振り替えている。売上高は8.9%減の3兆1782億円と2期続けて減収だった。

オンラインの会見で鈴木俊宏社長は前期業績について「4月にはインドの販売がゼロでスタートしたが、幸いなことに第2四半期からは各市場でV字回復となり前年を上回るようになった。しかし、半導体の供給不足など色々な問題も出ているので、『良かった』では終われなかった」と評価した。

感染拡大が深刻化しているインドの今期の情勢については「36州のうち28州でロックダウンとなっており、販売店も8割が閉店している。今後どう回復するか明確な生産計画は言えない状況」と指摘した。ただ、医療向けに酸素を供給するために停止している3工場では、5月17日からの稼働再開に向け、準備していると明らかにした。

6月に退任予定で、最後の記者会見となった鈴木修会長は「マスコミの皆さん、最後ですからごきげんよう」と挨拶したうえで、かつて「芸術品」と指摘した軽自動車については「芸術品は守り抜いてほしいですね」と語った。

スズキ・アルト初代(1979年)《写真提供 スズキ》 スズキの鈴木俊宏社長《写真提供 スズキ》 スズキ・ハスラー現行《写真提供 スズキ》