ブガッティ・シロン・ピュルスポール《photo by Bugatti》

フォルクスワーゲングループは3月16日、デジタル開催した年次プレスカンファレンスにおいて、傘下のブガッティの2021年の新型車計画を発表した。『シロン』(Bugatti Chiron)に、新たな派生モデルが登場する予定だ。

◆8.0リットルW16気筒+4ターボは最大出力1500hp

シロンは、『ヴェイロン』の後継車として、2016年春にデビュー。ヴェイロン同様、世界で最もパワフル、最速、最もラグジュアリーかつエクスクルーシブな量産スーパーカーを目指して、開発された。

ミッドシップに搭載される新開発の8.0リットルW16気筒+4ターボは、2ステージターボ化され、最大出力1500hp/6700rpm、最大トルク163kgm/2000-6000rpmを引き出す。ヴェイロンの最大出力1200hp、最大トルク153kgmに対して、300hp、10kgm強化された。

トランスミッションは7速デュアルクラッチ「DSG」で、駆動方式は4WD。シロンは、0〜100km/h加速2.5秒、最高速420km/h(リミッター作動)という世界最高峰の性能を実現する。

◆シロンの基本デザインには手を加えず高性能化した「ピュルスポール」

このシロンから2021年、新たな派生モデルが登場する。シロンの派生モデルには、2つのパターンがある。ひとつは、シロンの基本デザインには手を加えず、高性能化を図ったモデル。もうひとつは、シロンの車台やエンジンをベースに、専用ボディ化したものだ。

前者の代表的な例が、『シロン・ピュルスポール』。シロン・ピュルスポールは、シロンをベースに、コーナリング性能を引き上げることに重点を置いて開発された。世界限定60台が生産される予定で、価格は300万ユーロ(約3億8950万円)だ。

◆ワインディングロードで本領を発揮する足回り

ブガッティは、とくにワインディングロードで本領を発揮するシャシーとサスペンションを、シロン・ピュアスポーツ向けに開発している。快適性を犠牲にすることなく、フロントに65%硬いスプリング、リアに33%硬いスプリングを採用した。アダプティブダンピングのコントロール、キャンバー値の変更(マイナス2.5度)により、さらにダイナミックなハンドリングを追求している。

フロントとリアのカーボンファイバー製スタビライザーは、さらにロールを最小限に抑える。ばね下重量は、19kg軽量化された。この19kgは、16kgにおよぶ車輪の軽量化に加えて、チタン製ブレーキパッドのベースパネルによる2kgの軽量化、ブレーキディスクの1kgの軽量化を合計したものだ。また、シャシー、サスペンション、ボディの接合部分の剛性を、フロントで130%、リアで77%強化することにより、路面への接地性を向上させている。

タイヤは、ミシュランが新開発した高性能タイヤ「スポーツカップ 2 R」だ。フロントが285/30R20、リアが355/25R21サイズを履く。新素材のコンパウンドのおかげで、高いコーナリングスピードでも優れたグリップ力を発揮するという。

ミッドシップには、2ステージターボ化された8.0リットルW16気筒+4ターボエンジンを搭載する。最大出力は1500hpと変わらないが、発生回転数は6700rpmから6900rpmへ、200rpm引き上げられた。最大トルクは、163kgm/2000〜6000rpmと変わらない。

7速デュアルクラッチの「DSG」は、全体のギア比を15%クロスレシオ化した。駆動方式は4WDだ。ブガッティによると、60〜120km/hの中間加速は、ベース車両に対して3秒短縮しているという。最高速は350km/hでリミッターが作動する。

4種類のドライブモードに加えて、「スポーツ+」モードが採用された。通常のスポーツモードよりも、サーキット寄りの設定となっており、高速コーナーでもドリフトできる理想的なラインを走行できるという。

◆ディーヴォはベース車両のシロンと異なる専用デザイン

一方、後者の代表的な例が、『ディーヴォ』。シロンに対して、エアロダイナミクス性能のさらなる向上が追求された。フロントカバーには空気取り入れ口が追加されており、車両の有効断面積を減らすと同時に、フロント部分の空気の流れを改善し、空力効率を高めている。「エアカーテン」も最適化されており、車両のサイドの空気の流れが良くなっているという。

新設計のワイドなフロントスポイラーは、ダウンフォースを高め、フロントエアインレットに多くのエアを導きく。これにより、全体的な冷却性能を向上させた。

ブレーキは、車両の両側にある4つの独立した空気システムによって冷却される。空気は、フロントバンパーの上の高圧領域、フロントフェンダーの吸気口、フロントラジエーターの吸気口、タイヤ前方のディフューザーから取り入れられる。ベーンは、これらの領域からの冷気をブレーキディスクに送る。熱シールドは、熱風をホイールから排出する。これにより、ブレーキが過熱せず、タイヤの温度を常に最適に維持する。このシステムはすでにシロンで使用されているが、ディーヴォの場合、さらに冷却性能が引き上げられている。

ルーフには、NACAエアダクトが組み込まれた。専用設計のエンジンルームカバーと組み合わせることにより、エンジンルームへの非常に高いエアフローが確保されている。

後部には、新デザインのリアスポイラーが備えられた。エアブレーキとしても機能し、走行モードによって異なる角度に設定される。リアスポイラーの幅は1830mmで、シロンより23%幅広い。ワイドなリアスポイラーは、エアブレーキ性能を向上させるだけでなく、大幅にダウンフォースを高める。4本のテールパイプに対応したリアディフューザーも専用デザイン。発生するダウンフォースの合計は456kgで、シロンよりも90kg増加しているという。

リアには、3Dテールライトが装備された。3Dプリントを使って製造されたリアグリルと一体設計された。このリアグリルは特別なフィンが特長で、合計44個のフィンが点灯し、テールライトとして機能する。

◆最高速を420km/hから380km/hに抑えた理由

シャシーとサスペンションの専用チューンと軽量化により、さらなるコーナリングパフォーマンスを追求している。シャシー開発の主な目的は、コーナリングダイナミクスを改善すること。この目的のために、キャンバー角が見直された。その結果、ディーヴォの最高速は380km/hに制限される。シロンが最高速420km/hを引き出す際に必要なトップスピードモードは装備されない。横加速度に関しては、ディーヴォは1.6gに達するという。8.0リットルW16気筒ガソリンエンジンは4個のターボで加給され、最大出力1500hpを獲得している。

ステアリングとサスペンションは、すべてのモード(「EB」、「アウトバーン」、「ハンドリング」)で、よりダイレクトなレスポンスと大幅にスポーティなドライバビリティを実現するようにチューニングされた。ディーヴォは、シロンよりも35kg軽量だ。この軽量化は、新設計の軽量ホイールやカーボンファイバー製インタークーラーカバーなど、さまざまな設計変更の結果になる。

固定式のフロントディフューザーフラップ、断熱材の削減、軽量なサウンドシステムの採用により、重量を抑えた。重量を減らすために、センターコンソールとドアトリムの収納コンパートメントも省略されている。ディーヴォは、シロンよりもイタリアのナルド・サーキットにおけるラップタイムを、8秒短縮しているという。

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