ブリヂストンの石橋秀一CEO《オンライン画面キャプチャ》

ブリヂストンは2月6日、2020年12月期連結決算と中期事業計画(2021〜23年)を発表した。その会見で石橋秀一CEOは「これまでは危機管理を中心とした守りのフェーズだったが、今年から稼ぐ力を再構築する“攻めと挑戦”のステージに入る」と強調した。

同社が発表した2020年12月連結業績は、売上収益が2兆9945億円(前期比14.6%減)、調整後営業利益が2229億円(同35.0%減)当期純損益が233億円の赤字(前期は2401億円の黒字)だった。

タイヤ事業が新型コロナウイルスの影響で販売数量が減り、おまけに中国勢などとの価格競争が厳しく収益が悪化。また、工場や事業の再編費用を計上したことも響いた。その結果、1951年12月期以来、69年ぶりに最終赤字に転落した。

2021年12月期の業績見通しは、売上収益が3兆100億円(前期比0.5%増)、調整後営業利益が2600億円(同16.6%増)、当期純利益が2610億円と増収増益。「コロナ影響については、第1四半期(1〜3月)にいろいろな形でインパクトがあると見ているが、第2四半期以降は徐々に回復してくるという前提で計画を組んだ」と石橋CEOは説明する。

ただ、今回の記者会見で質問が集中したのは業績についてではなく、中期事業計画で発表した生産拠点の再編についてだった。なにしろタイヤ工場など世界で約160ある生産拠点を2023年までに約4割減らすと発表したからだった。

しかし、石橋CEOは「生産拠点の再編はセンシティブな問題なので、現時点では開示はできない。丁寧に説明し、しかるべき適切なタイミングで開示しようと考えている」と話し、どの工場でどの程度減らすか、人員の削減規模などについて具体的な言及を避けた。

工場の再編については、タイヤ工場だけでなく、多角化製品の工場も含まれており、「国内外を問わずすべて土俵に上げている」(石橋CEO)そうだ。いずれにしても、同社はプレミアム商品をどんどん押し出していく戦略を中期事業計画の中で打ち出しており、汎用品しかつくれない工場は再編の対象になると言っていいだろう。

「生産拠点を4割削減することによって、大きくミシュランに負けるとは考えていない。高品質なものをつくることにより集中し、その生産能力を最大化していく方向にフォーカスしていきたい。当然、ある段階では生産拡大の投資も必要だと思っているが、それはプレミアム商品にフォーカスした投資だ。ミシュランとの競争では、タイヤの数量ではなく、質でナンバーワンを目指す」と石橋CEOは力説する。

ブリヂストンは2020年を「第3の創業」の初年度と位置づけ、「2050年サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げ、その実現のために中期事業計画を策定している。工場の再編は、そのための第1歩ということなのだろう。

ブリヂストン12月期連結決算《資料:ブリヂストン》 ブリヂストン12月期連結決算《資料:ブリヂストン》