光無線給電システムの実用化例例(イラスト:HARU)

東京都市大学は、同大学総合研究所の石川亮佑准教授と東京工業大学の宮島晋介准教授が共同で、青色発光ダイオード(LED)を用いて離れた場所に電気を送る技術を開発したと発表した。

近年、電化製品やネットワーク機器などの多くが無線化する中で、離れた場所から電気を供給する技術への期待が高まっている。

今回、「ペロブスカイト」と呼ぶ結晶構造の半導体を用いて、可視光の中で高いエネルギーである青色の成分を効率よく電気に変換できる太陽電池を開発し、青色LEDの光をペロブスカイト型太陽電池に当て、光エネルギーの1/5以上を電気に変換することに成功。新型太陽電池と青色LED、移動体を追尾する装置を組み合わせることで、スマートフォンや電気自動車(EV)に無線で給電するシステムの実現が期待でき、10年以内の実用化を目指す。

一般的な太陽電池に用いられるシリコンは波長が長い赤外線を電気に変換する性質を持つ。一方、今回用いたペロブスカイト型半導体の原料、メチルアンモニウム臭化鉛は、赤外線より波長が短く高エネルギーの青色光を電気に変換できる。今回、青色LEDとペロブスカイト型太陽電池を約50cm離して設置し、青色光を無線で送って電気に変換する実験を実施。その結果、太陽電池に当たった光エネルギーの20.2%を電気に変換することに成功した。

ペロブスカイト型太陽電池は、脆く割れやすいシリコンでできた太陽電池と違って軟らかく、曲面にも貼り付けできる。また、シリコン太陽電池の製造には真空装置が必要だが、新型太陽電池は大気中での製造が可能。ただし、長時間使用すると発電能力が低下するという欠点があるため、今後は、長寿命化と変換効率の向上を目指した研究を進める。さらに、電機メーカーと共同することで、指向性の高い青色LEDの向きを自動車や携帯情報機器など移動体の動きに合わせて追尾できるシステムの開発を進めていく。

開発されたペロブスカイト型太陽電池と青色LEDによる光無線給電の様子《画像提供 東京都市大学》