NSR500のフレディ・スペンサー選手(1985年)《写真提供 ホンダ》

『NSR500ハイパー2スト エンジンの探求』
著者:つじ・つかさ
発行:グランプリ出版
定価:3000円+税
ISBN978-4-87687-378-4

1980年から90年代に活躍したグランプリマシン、ホンダ『NSR500』を主たる教材にしつつ、その開発諸氏へ取材を敢行。2ストロークエンジンの構造や作動原理を丁寧に解説し、まとめた1冊が新装版で復刊した。

本書が面白いのは大きく2つの視点に立っていることだ。ひとつは2ストロークエンジンに関しての徹底的な基本解説。そしてもうひとつはNSR500の詳細解説だ。当然リンクするものではあるが、それぞれがきっちりと述べられているのが興味深い。

著者が前書きで述べているように、ほとんどのエンジン解説書が4ストロークエンジンに関するもので、2ストロークエンジンについてはほとんどないに等しい。それがきっかけで誕生したのがこの本である。

また、様々な2ストロークエンジンを浅く広く調べるよりも、特定の1機種に絞ることで、より2ストロークの本質に近づけるのではないか、それであればレーシングマシンが良いとの判断からNSR500が選ばれたという。

そこで開発技術者への取材が始まるのだが、その基本は、「2ストロークとはそもそもどうなっているのか」から始めたそうだ。従って、その内容も全てその基礎から書かれているので、メカニズムにそれほど詳しくなくても読みやすい。また、詳しい人であれば、新たな発見とともに、意外にも自分が勘違いしていたことが見つかるかもしれない。

いずれにせよ、拾い読みするのではなく、じっくりと時間を掛けて最初から読んでいきたい1冊である。

『NSR500ハイパー2スト エンジンの探求』《発行:グランプリ出版》