勝田貴元(2020年WRC第2戦=2月)《写真提供 TOYOTA》

18日、トヨタの世界ラリー選手権(WRC)に関する来季2021年の活動概要が発表され、勝田貴元が全戦に「トヨタ・ヤリスWRC」で参戦することが明らかになった。

トヨタのラリースト育成計画「TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラム」は2021年も勝田貴元(かつた たかもと)の育成を継続し、勝田はWRC全戦で「トヨタ・ヤリスWRC(World Rally Car=“WRカー”)」をドライブできることになった。もちろん、復活初回開催を迎える予定のラリージャパンも含まれる。

1993年3月生まれ、現在27歳の勝田は昨季(2019年)、WRCのトップカテゴリーマシンである“WRカー”のステアリングを握ってのWRC参戦に初トライ。昨季2戦、今季5戦で「ヤリスWRC」でのWRC参戦を経験した。ラリー総合での今季ベストは7位だが、最終第7戦ラリーモンツァでは自身初のステージ1位タイムをマークする活躍も見せている。

勝田のコ・ドライバーは引き続きダン・バリットが務める。そしてユホ・ハンニネンが新たに勝田のインストラクターに就任した(ハンニネンはTOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのテストドライバー)。

勝田貴元のコメント
「2020年は誰にとっても非常に困難なシーズンでしたし、これまでのように学びを重ねるのは簡単ではありませんでした。しかし、自分自身のパフォーマンスとドライビングはシーズンの始め頃と比べて大きく改善したと思います。(ラリー総合の)良いリザルトを残すことはできませんでしたが、良い走りをできたステージがいくつかありましたし、様々なコンディションやクルマのセットアップについて理解が深まりました」

「とても良い経験でしたし、以前に比べて格段に自信が向上しました。チームと、サポートしてくれた人たちに感謝していますし、来年もヤリスWRCで参戦できることを本当に嬉しく思います。このような特別な機会を与えてくれたTOYOTA GAZOO Racingに、心から感謝しています。さらに成長し、大きな自信を持って臨めるステージがあるラリーでは、良い結果を残せるよう頑張りたいと思います」

「また、来シーズンはユホ(ハンニネン)とより緊密に仕事をできるのも楽しみです。彼のことはよく知っていますし、一緒にテストを行なったり、彼が運転するクルマの助手席で学んでもきました。経験豊富で、クルマのことをとても良く理解している本当に優れたドライバーだと思います。ユホのアドバイスを受けることで、より良いドライバーに成長できると確信しています」

勝田には来季さらなる飛躍を成し遂げ、その堂々たる姿を11月開催予定の凱旋ラウンド、ラリージャパンで見せてほしい。来季F1では角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)が日本勢久々のレギュラードライバーとして参戦、という話題もあるので、分野こそ違うが、勝田と角田には相乗効果、切磋琢磨を期待したいところだ。

続いてトヨタのWRCワークスチーム「TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team」(TGR-WRT)についてだが、来季2021年に向けて新たなチーム代表が誕生することとなった。従来の指揮官トミ・マキネン(現役時代は1996〜99年に三菱でWRCを4連覇)が1月からトヨタ自動車のモータースポーツ・アドバイザーに就任するため、その後任としてヤリ-マティ・ラトバラがチーム代表を務める(マキネンの転任に際し、TGR-WRTの体制面にも変更等あり=既報)。

ラトバラもWRC通算18勝の実績を誇る名手で、トヨタが久々にワークス参戦を再開した(TGR-WRTとして参戦を開始した)2017年には陣営にシーズン初勝利をもたらしたドライバー。自身最後のWRC優勝は18年最終戦で、トヨタの同年マニュファクチャラー部門タイトル獲得にも貢献している。19年までTGR-WRTのレギュラーを務めていた。

ラトバラ新代表は「初期からこのチームの一員であっただけに、(豊田)章男さんとトミ(マキネン)が一緒になってやってきたこの仕事を引き継ぐことができるのは大きな喜びです。ドライバーとして長年学んできたことを活かし、チームの各ディレクターと協力しながら、チームに多くの成功をもたらしたいと思っています」との旨のコメントをしている。

TGR-WRTのドライバーとして2021年シーズンを戦う3人の布陣は今季と同じ。2年連続8度目のドライバー部門王座を目指すセバスチャン・オジェ、今季惜しくも逃した初王座を今度こその気構えで狙うエルフィン・エバンス、そして若手ホープのカッレ・ロバンペラという強力メンバーである。

2017年のワークス参戦再開以降、トヨタは18年にマニュファクチャラー部門、19年と20年にドライバー&コ・ドライバー部門のタイトルを獲得してきた(19年ドライバー部門王者はO.タナク=現ヒュンダイ)。しかし、これら“全冠”を一挙に獲得したシーズンは(ワークス参戦再開後)まだない。全冠制覇の実現がトヨタの2021年シーズンの目標となる。

2021年のWRCは1月にラリーモンテカルロで開幕予定。ただ、全12戦で発表されていたカレンダーのうち、既に2月のスウェーデン戦がコロナ禍によってキャンセルになっている。実際に計何戦で、どことどこで開催されるのか、今季同様に流動的なものとなる可能性も否定はできない情勢だ。

勝田、そしてトヨタはライバルたちと同様、競技以外の面にも特段に留意をし続けながら新シーズンを迎えることになる。

勝田貴元(2020年WRC第2戦=2月)《写真提供 TOYOTA》 勝田貴元(2020年WRC第7戦=12月)《写真提供 TOYOTA》 #18 勝田貴元(2020年WRC第7戦=12月)《写真提供 TOYOTA》 トヨタの新代表、ヤリ-マティ・ラトバラ(右から2人目。写真はドライバーとしてのWRC最終優勝である2018年最終戦)。《写真提供 TOYOTA》