みなとみらいイノベーションセンターにある村田製作所初の車載向け専用施設《写真撮影 山田清志》

村田製作所は12月15日、神奈川県横浜市みなとみらい21地区に研究開発拠点「みなとみらいイノベーションセンター」を開業するとともに施設を報道陣に公開した。同センターは地上18階、地下2階、延べ床面積が6万5335平方メートルで、総工費は400億円だ。

「このイノベーションセンターは新たな事業の創出を目指したもので、自動車、エネルギー、ヘルスケアといった成長市場に注力するために設けた開発拠点で、協業などを通じて先進的な製品開発を行っていく」と中島規巨社長は説明する。

低階層はアクティビティフロアやコモンスペースとなっており、5階に来客応対ゾーンを設けて社内外を問わずコラボレーションできる場を設けている。そして、そこには同社初の施設が2つある。

1つが車載向け専用施設で、同社の車載ビジネスを紹介する「展示室」をはじめ、さまざまな実験を実施することができる「ピット施設」、走行状態を再現しながら実験・検証を行うことができる「大型電波暗室・シャシダイナモ室」がある。

「アイデアが生まれたら、すぐに実証実験をできるようにした」とみなとみらいイノベーションセンター事業所長の川平博一執行役員は話し、ここで自動運転やEVなどのクルマの進化に欠かせない新たなデバイスやモジュールを開発し、CASE時代のクルマの進化に貢献していく方針だ。

そしてもう一つが「ムラーボ」と呼ばれる施設だ。ここは「エンジニアの卵が生まれるきっかけの場」をコンセプトに子どもたちが科学を楽しく学べる体験施設となっている。「DISCOVER」「HISTORY」「SIMBOL」「THINK」の4つのゾーンに分かれ、それぞれ工夫したつくりになっている。

例えば「DISCOVER」ゾーンでは、専用の端末を首から提げて、クイズに答えたりゲームをしたりして、エレクトロニクスの仕組みが楽しく学べるようになっている。また、「THINK」ゾーンでは、科学に関する本が200冊ほど展示され、飲み物を飲みながらそれらの本を自由に見ることができる。

中階層は研究開発ゾーンで、技術陣が働くオフィスとなっており、それぞれのフロアはそこで働く20〜30代の若手技術者が自らレイアウトし、自分たちが働きやすいようにした。高層階は食堂、カフェ、研修室となっており、最上階のコンベンションルームは120人収容でき、異業種交流会や社内フォーラム、パーティなどができる場として活用していく。

村田製作所はこのイノベーションセンターを通して、新たな製品を生み出していこうというわけだが、この施設にはもう一つ大きな狙いがある。それは東日本の優秀な技術者を獲得しようということだ。「当社は京都ではよく知られた企業だが、東日本の一般の人にとってはほとんど無名に近い。採用の際も、勤務地が開発拠点のある野洲事業所(滋賀県)になると言うと、辞退する人が少なくなかった」(岩坪浩専務執行役員)と何度も辛酸をなめてきた。

「研究開発拠点が集中しているみなとみらいという地理的メリットを活かし、顧客や市場との接点強化を図りながら、新しいビジネスを生み出して事業拡大を目指しいく」と中島社長は力強く話していた。 近隣には日産自動車をはじめ、富士ゼロックス、京セラ、京浜急行電鉄、資生堂などのビルが建ち並んでいる。

20〜30代の若手技術者がレイアウトしたオフィスフロア《写真撮影 山田清志》 「ムラーボ」にある科学を楽しく学べるゲーム《写真撮影 山田清志》 「THINK」ゾーンで行われた会見の様子。後に科学に関する本が並んでいる《写真撮影 山田清志》 「ムラーボ」で記念撮影をする(左から)みなとみらいイノベーションセンター事業所長の川平博一執行役員、中島規巨社長、岩坪浩専務執行役員《写真撮影 山田清志》