マツダ3 100周年記念車 2020ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー受賞記念モデル《写真提供 マツダ》

マツダは19日、『マツダ3』の商品改良と「マツダ3 ファストバックX 100周年記念車 2020ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー受賞記念モデル」の発売を発表した。説明会では、既存オーナーも改良アップデートを受けられる可能性についての言及もあった。

商品改良の対象となるのはマツダ3 e-SKYACTIV X(2.0Lガソリンエンジン+マイルドハイブリッド車)とマツダ3 SKYACTIV-D 1.8(ディーゼルエンジン)の2種。これにマツダ3 ファストバックXのイヤーカー受賞記念モデルが加わる。主な改良点は、EGRや燃料噴射などECU系のアップデートによる出力・トルクアップや操作性・応答性の向上。予防安全性能の向上となる。

SKYACTIV XはEGR制御のチューニング、シリンダー内圧センサーによる燃焼フィードバックの改善を行い、最高出力は132kW(180ps)から140kW(190ps)に、最大トルクは224Nmから240Nmにアップされた。またガソリン車には、かねてより要望が高かった6速マニュアルトランスミッション搭載車が追加設定されるという。

SKYACTIV-Dは、EGRと燃料噴射制御のチューニングにより、最高出力を85kW(116ps)から95kW(130ps)にアップされている。最大トルクは270Nmと変更はない。

操作性や応答性の向上は、変速機の制御をリファインしたこと。具体的にはアクセル操作の量や速さを検知して制御条件に加える。こうすることで、ドライバーがゆっくり加速したいのか、高速道路で合流しようとしているのか、ワインディングでキビキビ走りたいのか、といった状況を予想して、変速速度を調整したり、飛び段シフトを行ったりする。

予防安全機能では、マツダではCTS(Crusing & Traffic Supprt)、MRCC(Mazda Rader Cruse Control)と呼ばれる機能の制御速度域を高速域まで広げた。CTSやMRCCは、いわゆる車線維持アシストと前車追従型クルーズコントロールを行うものだが、これまで渋滞時の利用を想定して速度域が55km/hまでに制限されていた。

マツダでは、高速道路のクルージングでもドライバーの疲労軽減のため「高速度域」まで制御できるようにした。高速度域の意味は、国内高速道路や自動車専用道路の法定速度域に対応していることだという。現在第2東名は最高速度が120km/hとなっている。このあたりがリミッターがかかる目安になると思われる。

話はそれるが、こういった諸元データは客観的な数字を示すべきだ。100km/hや120km/hと数字を出すとか違いしてその速度まで出していい、その速度まで安全だと勘違いする輩への対策というのは理解できるが、そろそろ、我々ユーザー側もメーカーの言うことを鵜呑みにしないリテラシーを身につけたい。

改良による車両応答性能の向上にともない、ガソリン・ディーゼルともに前後ダンパーの減衰力、フロントスプリングよび、フロントバンプストッパーの特性も質感向上のために手が加えられる。

狙った効果は、路面の凹凸で乗員上半身の動きをなめらかにすること。サスの動きの唐突さをださないことだという。技術的にはストッパーの当たり始めから15ミリまでのストロークを柔らかくする。なめらかな動きは走行中のタイヤの接地性も向上させる。現行モデルでは多少硬いとの声もあった、スプリングとダンパーについては、前後のバランスを調整している。

以上が機能的な改良点となるが、特筆すべきは、マツダからこれらの改良は、既存のマツダ3オーナーにもファームウェアアップデートのような形で無償提供することを検討中との発言があったことだ。

サスペンションの特性変更は部品交換が必要になるが、それ以外の出力特性や応答性能の改良、クルーズコントロールの制御条件変更は、すべてソフトウェアのアップデートによって可能なものばかりだ。2020年にOTAの技術要件が法的に整備された。トヨタは12月にもOTAによる機能アップデートに対応した車両をリリースすると言われている。マツダ3もそれに続く可能性があるわけだ。

これまでもリコールや軽微な仕様変更や修理などで、ECU等のファームウェアの書き換えで対応することもあったので、そもそも車両機能や性能がソフトウェアで調整可能なのは別に目新しいことではない。今回マツダ3のソフトウェアアップデートも、おそらくOTA(Over the Air)ではなく、ディーラー等への持ち込み改修になる可能性が高い。しかし、マイナーチェンジや機能向上が既存オーナーにも適用される意義は大きい。それも、これから出る新車ではなく、現行モデルがその恩恵に授かることができるのは、リセールバリューや商品価値の向上という点で、オーナーにとってはうれしい。

ただ、問題もある。マツダが無償アップデートを検討中としたのは、国交省他管轄当局との調整が必要だからだ。今回の改良は、出力アップが含まれるため、本来であれば車検の記載事項を変更しなければならない。厳密にいえば型式認定もとり直しになる。

コネクテッド機能は、パワートレインの種類に限らずすべてのクルマにとって今後は欠かせないものとなる。世界に類を見ない厳しい車検制度は、日本車の品質向上に役立った面は否定しない。車検と排ガス規制が現在のハイブリッド市場やCAFE規制に有利に働いていることも事実だろう。しかし、OTAやソフトウェア更新による車両諸元の変更は、日本の自動車産業がグローバルで生き残るためにも実現させるべきだ。

国交省も自動運転やCASE車両の普及、国際標準化には積極的だと聞く。立場上、拙速な動きはとれないだろうが、ぜひ前向きに進めてほしい。車検の記載変更が無理ならば、とりあえずCTS、MRCCの55km/h制限の解除だけでも展開できるようにすることを切望する。

先ほどの「高速度域」の話ではないが、ソフトウェアアップデートの解禁は、同時に我々消費者もCASEやOTAに対応できるリテラシーが求められる。長い目でみれば、消費者が変わらなければ自動車産業も変わらない。それによる停滞や衰退は消費者にも返ってくるだろう。

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