テスラ・モデル3《photo by Tesla》

矢野経済研究所は、2020年の車載用リチウムイオン電池世界市場を調査。車載用LiB生産の前提となる、世界のxEV生産台数推移・予測について公表した。

2019年の世界xEV(次世代車)市場はメーカー生産数量ベースで前年比18.8%増の682万1000台と推計。内訳はハイブリッド車(HEV)が同28.6%増の428万7000台、電気自動車(EV)が同13.2%増の195万8000台、プラグインハイブリッド車(PHEV)が同15.1%減の57万6000台だった。

欧州を中心にHEV(マイルドHEV、ストロングHEV)が高い伸びを示し、EVではテスラ『モデル3』等を中心に中容量(パック容量40kWh〜69kWh程度)EVが大きな成長を見せている。一方で、PHEV、低容量(パック容量5kWh〜39kWh程度)EVは前年割れ。特に中国では、Aセグメントの低容量EV、PHEV、そしてバスを中心とした商用EVを中心に拡大し、これまでxEV市場を牽引してきたが、補助金条件の変更等を背景に需要は伸び悩んでいる。 高容量(パック容量70Kwh以上)EVに関しては、同セグメントのメインプレーヤーだったテスラが中容量領域であるモデル3へ軸足を移したこと、また各国で補助金の恩恵を受けていた高価格帯のEVの需要が減少したことが前年割れの主要因であると考える。

将来展望については、xEV市場を取り巻く市場環境、特に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染拡大の影響によって産業全体が縮小した世界の自動車市場、また現時点での景気・経済対策等を考慮し、政策ベース予測と市場ベース予測の2つの成長予測を行った。

政策ベース予測では、世界的な環境規制強化の動きと、各国の普及政策、自動車メーカー(以下 OEM)各社の電動化シフトを背景に、2020年も欧州を中心にxEV市場が成長を維持するシナリオを読み込んでいる。

欧州ではドイツ、フランス等でPHEV、EVに対する補助金政策が2020年6月に発表されており、新型コロナウイルス感染拡大以降も成長継続が見られるEV市場を後押しする形となっている。2021年以降は環境規制クリアに向け、PHEV、EVで一定の成長が維持される見通しで、補助金条件や中国LiBメーカーによる新たなパック技術の発表状況等を含めて、中容量EVを中心に伸びると予測する。また、小容量EVに関してもVWが2023年に予定している小型EV『ID.1』の上市を踏まえ、一定規模での成長を実現すると予測する。マイルドHEVに関しては欧州OEMを中心に標準装備が今後進み、システム価格の下落、普及拡大が期待される。ストロングHEVは2019年の実績、並びに欧州OEMや中国OEMで新規参入の動きが見られる点を含め、引き続き成長が続く可能性がある。これらを踏まえ、政策ベースでのxEV市場規模(メーカー生産数量ベース)は2025年で2821万台、2030年には4792万台になると予測する。

市場ベース予測では、使い勝手の良さや車両価格の求めやすさなどの消費者側のニーズを背景に、新型コロナウイルスの影響による経済の減退を受け、xEV市場も前年割れで推移するシナリオを読み込んでいる。

2021年以降、xEV市場は回復に転ずると予測するが、自動車市場全体が縮小傾向にある中、OEM各社は内燃機関車(ICE)に比べ利幅が少ないPHEV、EVの展開が当初の想定よりも困難となり、また経済環境を考慮すると消費者側の需要拡大も、やはり当初の見込み程には至らないと予測する。一方、ストロングHEVに関してはガソリン価格下落の影響が懸念されるも、欧州OEMや中国OEMで新規参入の動きが見られる点を含め、今後も一定の成長が続く可能性があると予測する。また、マイルドHEVに関しては欧州OEMを中心に標準装備が今後進み、台数規模では政策ベース予測を下回るも、PHEV、EVの台数伸び悩みを受け、構成比率は高くなると予測する。これらを踏まえ、市場ベース予測でのxEV市場規模は2025年で1206万台、2030年には2030万台になると予測する。

xEV世界生産台数推移・予測《図版提供 矢野経済研究所》