2019年7月に開催された「ラリーエストニア」の模様。《写真提供 TOYOTA》

2日、世界ラリー選手権(WRC)の2020年シーズン“新カレンダー”が発表された。今季は「少なくとも全8戦」の見込みで、再開初戦は9月上旬に新たに組み込まれたエストニア戦になる。11月のラリージャパンの日程に変更は出ていない。

2020年のWRCは1月に伝統のモンテカルロで開幕し、2〜3月にスウェーデン戦とメキシコ戦を終了。第3戦メキシコではコロナ禍の急速な広がりによる全世界的な移動手段の制限強化を考慮し、急遽、一日早く終了する措置が採られていた。その後は実質的なシーズン中断状態に……。延期や中止の判断が相次ぎ、9月下旬のトルコ戦が残りラウンドの“トップ”の位置にあるのが直近の情勢だった。

今回発表された2020年WRC再構築版“新カレンダー”によれば、今季は「少なくとも全8戦」というかたちになる模様。現段階では第4〜8戦として以下のような“残り日程”のラインアップが形成されている。

■2020年WRC“残り日程”(7月2日発表版)
第4戦 9月4〜6日 エストニア
第5戦 9月24〜27日 トルコ
第6戦 10月15〜18日 ドイツ
第7戦 10月29日〜11月1日 イタリア
第8戦 11月19〜22日 ジャパン
*現段階のオプションとして、10月2〜4日のイプルー・ラリー(ベルギー)、日程確認中とされるクロアチア戦の2つがある。

日程が固まっている上記5戦のうち、トルコ、ドイツ、ジャパンに関しては、今季開幕時点の日程から変化なし。イタリアは6月が当初日程だったが、無期延期を経て上記の日程におさまった。

イタリア同様に無期延期の状態だったアルゼンチンは今回、今季のWRC開催がないことが明らかにされている。これでシーズン開幕時点の全13戦のうち、開催済みの3戦と上記4戦(トルコ、ドイツ、イタリア、ジャパン)を除く6戦が今季のWRCカレンダーから外れる格好になった。

そしてシーズン再開初戦として、新たに組み込まれた(WRCに“昇格”した)のがエストニア戦である。

WRCにおける33番目の開催国になるというエストニアは、昨季チャンピオンであるオット・タナク(当時トヨタ、今季ヒュンダイ)の母国。マルコ・マルティンという21世紀初頭の強豪選手も輩出している国であり、“少数精鋭の近代ラリー強国”と評しても間違いではないだろう。タナクはディフェンディングチャンピオンとして母国でのWRC初開催戦を走るという、栄誉ある機会を得たことになる。

ちなみに昨年(2019年7月)のラリーエストニアはWRCのプロモーションイベントとして開催されており、WRCの公式戦ではないながらも多くのトップ選手、トップ陣営が参戦していた。そのなかで優勝を飾ったのはタナク(当時トヨタ)であった。

なお、WRCとしての初開催になる今年9月4〜6日のラリー・エストニアは、通常のWRCよりも短い日程で実施される予定。競技自体は5日と6日の2日間になる見込みだ。

このエストニア戦に続き、やはり当初の今季WRCカレンダーには名前がなかったイプルー・ラリー(ベルギー)とクロアチア戦にも“オプション”の話があるという。つまり、最大で全10戦(残り7戦)の可能性も考えられるわけだが、日程の詰まり方を見るとここからの「純増」はちょっと厳しいような気もする。まだまだ世界のあちこちが“状況不透明”であることを鑑みた場合、現時点で日程が固まったラウンドに何かが起きた際にも8戦を確保するために、そういう意味合いもある“オプション”と考えるべきなのかもしれない。

いずれにせよ、半年近い公式戦のインターバルを経て、エストニア戦から再開される見通しとなった今季のWRC。予断を許さない面はどうしてもつきまとい続けるだろうが、残り5戦(以上)の無事な遂行を期待したい。

2019年のラリーエストニアを制したO.タナク組(当時トヨタ、右がタナク)。《写真提供 TOYOTA》 2019年のWRCトルコ戦。《写真提供 TOYOTA》 2019年のWRCドイツ戦。《写真提供 Red Bull》 2019年のWRCイタリア戦。《写真提供 Red Bull》 2019年に“WRCプレイベント”として開催された「セントラルラリー愛知・岐阜」。《写真提供 TOYOTA》