優勝を飾った#9 スコット・ディクソン。《写真提供 INDYCAR》

現地6日、NTTインディカー・シリーズが今季の開幕戦となるレースをテキサス・モーター・スピードウェイにて実施した。優勝は過去5度のシリーズ王座獲得経験を誇るスコット・ディクソン。佐藤琢磨は予選でクラッシュがあり、決勝不出走だった。

コロナ禍で3月にオンスケジュールでは開幕できなかった北米最高峰シリーズが、ついに今季の正式スタートを実現した。舞台は米テキサス州のオーバルコース、テキサス・モーター・スピードウェイ。元来この時季(6月)にお馴染みのレースが、ラウンド数の面で繰り上がっていって開幕戦になったような格好である。レース距離はもともとの設定よりあらかじめ短縮され、1デイ、原則無観客レースとして開催に漕ぎ着けた。

開幕戦へのエントリーは24台。今季はマシン(ダラーラDW12)のコクピットまわりにドライバー防護デバイス「エアロスクリーン」を装着した仕様で皆が走る。タイヤはファイアストン、エンジンはホンダとシボレーの2種。

予選では昨季王者のジョセフ・ニューガーデン(#1 Team Penske/エンジンはシボレー)がポールポジションを奪取、2年連続3回目の王座に向けて先制の構えだ。そして過去5冠のスコット・ディクソン(#9 Chip Ganassi Racing/ホンダ)が2位につける。

シリーズ参戦11年目となる日本期待の佐藤琢磨(#30 Rahal Letterman Lanigan Racing/ホンダ)は予選でクラッシュがあり、残念ながら決勝不出走になってしまった。1デイ開催でなければ、おそらく決勝に向けてマシンをスタンバイできたはずで、いきなりコロナ禍の直接的影響を受ける格好に……。昨年はポールポジションを獲っていたコースだけに悔しい結果だ。

決勝は200周、タイヤ的な事情等から今回は35周を最大連続周回数(グリーンフラッグ下における周回カウントが原則の模様)とする特別ルールも盛り込まれるなどしての戦いである。

予選で最前列を分け合ったインディ界伝統の2強チーム、ペンスキー(Penske)とガナッシ(Ganassi)の決勝レースにおける戦いは、次第にガナッシ優勢の流れへと傾いていく。レース終盤はガナッシのディクソンとフェリックス・ローゼンクヴィスト(#10)が優勝を争う展開に。大ベテランにしてインディの帝王ディクソンに、昨季の新人王ローゼンクヴィストが挑むチームメイトバトルである。

残り20周を切る頃からの最終ピットストップ、僅差で走るトップ2のうち先に入ったのは2番手のローゼンクヴィストだった。後から首位ディクソンがピットへ。残り約10周のタイミングでディクソンが前をキープしたままコースに戻ると、彼も、追うローゼンクヴィストも、それぞれが複数のマシンに囲まれるような状況だった。

なんとかディクソンを追いかけたいローゼンクヴィストは、そこでラップダウンのマシンに対し少々無理筋と見られるパッシングを仕掛けた。その結果、姿勢を乱してスピン、クラッシュ……。ローゼンクヴィスト初優勝の可能性は霧散した。

開幕戦を制したのはディクソン、貫禄の勝ちっぷりで通算47勝目である。暗闇が覆うようになったビクトリーレーンでは、マシンを降りてヘルメットを脱ぎ、米NBCから向けられたマイクに答えながらマスクをするという異例のシーンも演じた(今季は恒例になるシーン?)。

ディクソンは「チームとしての努力によって得られた結果だ」と自陣スタッフやホンダへの謝意を表明。それに続けられた「関与したすべての人たちに深い感謝を捧げたい」との言葉からは、コロナ禍のみならずデモが相次ぐなど、困難な状況が続くアメリカで今回のレースを実現させた全関係者を讃える想いも感じられた。

参戦2年目のローゼンクヴィストは、2017年にスーパーフォーミュラ、2018年はSUPER GTと日本での活躍歴を有する選手。今回は惜しくも大魚を逸した(リザルト上は20位)。周回遅れをパスしようとした末の暗転は「僕の判断(による結果)だ。たぶん、すべきではなかったことなんだと思うよ」。インディカー初優勝は次戦以降にお預けとなったが、その日はそう遠くないはずである。

また、ローゼンクヴィスト同様に日本からの転身組である今季新人、昨季スーパーフォーミュラ・シリーズ3位のアレックス・パロウ(#55 Dale Coyne Racing with Team Goh/ホンダ)はレース前半、他車のスピンに巻き込まれるアクシデントで戦線離脱となっている(リザルトは23位)。琢磨、ローゼンクヴィスト、パロウら“ニッポン勢”にはちょっと辛い開幕戦であった。

決勝2〜3位はペンスキー勢のシモン・パジェノー(#22)とニューガーデン。4位はザック・ヴィーチ(#26 Andretti Autosport/ホンダ)、5位にはエド・カーペンター(#20 Ed Carpenter Racing/シボレー)が入っている。

第2戦は7月4日、インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースを舞台に実施される予定で、7月は3大会5レースのラインアップだ。そして今季のインディ500(第104回大会)は現状、シリーズ第8戦として8月23日決勝の日程でスケジュールされている(シリーズは現段階で全14レースの予定)。

優勝を飾った#9 スコット・ディクソン。《写真提供 INDYCAR》 優勝を飾った#9 スコット・ディクソン。《写真提供 INDYCAR》 充分な間隔をとって、マスク装着での優勝記念撮影。《写真提供 INDYCAR》 ここでも「ソーシャルディスタンス」。《写真提供 INDYCAR》 #30 佐藤琢磨は残念ながら決勝不出走に。《写真提供 INDYCAR》 ポールを獲得した#1 ニューガーデンを先頭に、無観客バトルへ(#1 ニューガーデンは決勝3位)。《写真提供 INDYCAR》 決勝2位の#22 パジェノー。《写真提供 INDYCAR》 実に惜しいレースとなってしまう#10 ローゼンクヴィスト。《写真提供 INDYCAR》 デビュー戦の#55 パロウは、もらい事故的な不運に遭遇。《写真提供 INDYCAR》