研究のイメージ図《画像:京都大学》

京都大学は、電気自動車(EV)の完全普及によるCO2排出量削減の効果をシミュレーション。その結果、現状のままでは将来のCO2排出量はほとんど変わらないことが明らかになった。

EVの急速な普及により、将来の自動車由来のCO2排出量は大きく変わることが予想されている。2015年のパリ協定では、産業革命前から今世紀末までの地球の平均気温の上昇を2度以下に抑えることで合意。温室効果ガスの排出を今世紀後半に実質ゼロまで下げるという気候安定化目標を掲げた。しかし、それにEVがどのように貢献できるのかという問題はこれまで明らかとなっていなかった。

今回、藤森真一郎 京都大学工学研究科准教授、張潤森 広島大学助教授らの研究グループは、将来のEV導入とそれによるCO2排出量削減の効果を明らかにした。

今回の研究では、EVの導入状況と交通部門以外の排出削減努力の進展度合いによって6通りのシナリオを設定し、コンピューターシミュレーションを実施。その結果、EV導入により、エネルギー消費量は減少することがわかったが、発電システムが火力発電に依存する現状のままでは将来のCO2排出量はほとんど変わらず、全体としては正味で増加してしまうことがわかった。さらに、仮に発電システムに再生可能エネルギーを大規模に導入したと仮定しても、2割程度のCO2削減にとどまった。

この結果は、パリ協定の2度目標を達成するためには、自動車関連だけの対策では難しく、家庭・産業・交通といったエネルギー需要全体とともに、発電を含むエネルギー供給の脱化石燃料化といった社会全体での取り組みが必要であることを示唆している。