第3ターミナルの搭乗口付近を巡回するSEQSENSE(シークセンス) SQ-2

成田国際空港(NAA)では2月4日より第3ターミナルにおいて新たな警備ロボット「SEQSENSE(シークセンス) SQ-2」を導入すると発表した。東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、空港での立哨警備および巡回警備の更なる高度化と効率化を目指す。警備ロボットの導入は第1、第2ターミナル続いてのもの。

空港ロビーにいると、何やら心地良い電子音と共にシークセンスSQ-2が近づいて来た。ロボットの大きさは高さ129.5cmで、ちょうど小学3年生程度の背の高さ。頭にあたる部分には回転させて周囲360度を把握できる3D-LiDARを搭載。このセンサーであらかじめ周辺の地図を把握しておき、走行中にその差分を検知して障害物を避けながら自律走行するのだ。この動きがとてもかっこよく近未来的。また、実質360度を捉えられるカメラと合わせ、警備拠点の遠隔モニターからロボット周辺をリアルタイムで監視できる仕様ともなっている。

ユニークなのは、このシークセンスSQ-2を介して無線でつながっている防災センターと会話ができる点。マイクとカメラの近くにかざす場所を示す場所が描かれており、利用者がカメラの前で手などをかざすと通話モードとなって実現する。防災センターのオペレーターとの会話なので、「不審物がある」「○○はどこ?」といった、一通りの内容に会話で対応できる。また、今回の警備メニューにはないが、ロボットには火災などのリスクとなる異常熱源を感知するサーマルカメラも搭載しているという。

自律走行の速さは秒速40cm(1.4km/h)ほどで、人が歩く速度よりもゆっくりめで走行する。シークセンスSQ-2の重量は約65kgほどあり、転倒リスクを抑えるために重心はかなり低くし、仮に人がぶつかってもそう簡単には倒れない設計。稼働時間は最大10時間だが、実稼働は6時間を予定する。また、2019年6月から第1、第2ターミナルで導入したセコム「X2」はヨコ型ロボットだったが、シークセンスSQ-2は足回りの面積が小さいタテ型。この違いの理由は、第1、第2ターミナルに比べて第3ターミナルは施設が手狭で、そういった場所でも動き回れることを重視したという。

シークセンスSQ-2は、ロボット開発のスタートアップで明治大学の黒田洋司教授らが設立した企業SEQSENSE(CEO:中村壮一郎氏)によって開発された。これまでに横浜ランドマークタワーで実証実験を行った後、三菱地所が2018年6月にSEQSENSEに対して5億円を出資、現在は三菱地所が持つ東京大手町パークビルにおいて同型ロボットの運用を始めているところだ。NAAへは同型ロボット1台を導入する。

NAAでは既に清掃ロボットを導入済みの他、今回の導入により全ターミナルで警備ロボットの配備を完了。さらに2020年春には多言語情報発信を行うサイネージロボットを導入し、同年夏頃にはインタラクティブなインターフェースを持つ案内ロボットの導入も予定する。東京オリンピック・パラリンピックに合わせ、NAAでは人とロボットの力を融合させた、より高度で効率的な館内警備を実現していく考えだ。

シークセンスSQ-2のヘッドには3D・LiDARを3基搭載し、常時回転させて周囲30mを360度にわたってを監視する。なお、このLiDARはシークセンス社オリジナルで特許取得済み 上が360度撮影に対応する魚眼レンズを備えたカメラ。これを前後に搭載する。下のサーモカメラは今回使っていない カメラの脇に手をかざすと座標でそれを認識し、防災センターとつながる 防災センターとつながったら、マイクに向かって話しかかける 充電スポットにはバッテリー残量を監視しながら自動的に戻る 重心を低くして倒れにくい設計になっている 警備ロボット導入について説明するNAAの空港運用部門保安警備部マネージャーの國本正典氏 シークセンスSQ-2の導入に携わったシークセンス社のCEO中村壮一郎氏 左からNAA経営企画部門IT推進部マネージャー阿部英崇氏、國本正典氏、中村壮一郎氏、シークセンス社経営企画部の金 成在(キム ソンジェ)氏 シークセンスSQ-2のスペック